こんにちは、Nameck(なめっく)です。
今回のテーマは不登校の子どもの体調についてです。
学校に行こうとすると腹痛や頭痛が起こり、学校に行けなくなってしまうというケースは少なくありません。
しかし、どのようなことが原因で症状が引き起こされているのかよくわからない方も多いのではないでしょうか。
・どうして学校に行こうとすると体調が悪くなるのかな?
・具合が悪くなってしまう子にはどのように対応すればよいの?
こういった疑問に答えるために、次のポイントを解説していきます。
【この記事で学べること】
- 不登校の子が起こす心身症状とは
- 不登校の子が体調不良になってしまうメカニズム
- 体調不良の不登校児への望ましい対応
本ブログの内容は、科学的に分析された心理学論文の情報に基づいています。
それでは、さっそく不登校児の体調不良の原因について学んでいきましょう!
不登校の子が起こす心身症状とは
不登校と体調不良は密接なかかわりを持っています。
代表的なケースとして、朝になって学校に行こうとすると、具合が悪くなってしまい、学校に行けなくなってしまうというものです。
しかし、学校に行かなくてよくなると症状が軽減したり、症状が見られなくなります。
病院に行っても、明確な原因などが分かりません。
そのため、甘えであったり、体調不良だと偽っているのではないかと誤解されることも少なくないのです。
不登校児に代表的な症状としては次の通りです。
- 頭痛
- 腹痛
- 気分が悪い・だるさ・立ちくらみ
頭痛
不登校児の頭痛は次の2つに分けられます。
- 片頭痛
- 緊張型頭痛
片頭痛は、心臓の鼓動と伴ってズキンズキンと頭が痛み、身体を動かすとより痛みが強くなるものです。
これに対し、緊張型頭痛は一定の痛みがずっと続き、心身の緊張を伴うため肩こりを同時に発症しやすいという特徴があります。
このどちらも心理的要因によって症状が強くなる特徴があり、登校しなければならないという緊張から出現しやすいのです。
腹痛
学校に行こうとすると腹痛が現れるものは過敏性腸症候群と呼ばれます。
過敏性腸症候群は次のような特徴を持っています。
お腹の不快感もしくは痛みを伴う際に次のような症状が週に1回以上見られ、2か月以上続いている
- 排便により、痛みや不快感が軽減する
- 腹痛や不快感が現れることでトイレに行く回数が増加する
- トイレに行った際の便が下痢や硬便など形状に違いがみられる
このような腹痛は学校に行かなければならないというストレスから症状が出現したり、悪くなります。
そして、欠席することが決まると症状が治まるため、怠けなどと勘違いされやすいのです。
気分が悪い・だるさ・立ちくらみ
めまいやだるさ、立ちくらみなどの症状は起立性調節障害と呼ばれます。
この疾患の主な特徴としては、次のようなものが見られます。
- 朝起きれない
- 食欲がない
- 体のだるさ
- 頭痛
- 立っていると気分が悪くなる
- 立ちくらみ
このような症状は天候や日によって異なるため、怠けや甘えと誤解されがちです。
しかし、学校に行くように促しても、むしろ症状は悪化してしまいます。
不登校の3~4割がこの起立性調節障害であるとするデータもあるように、不登校と非常にかかわりの深い疾患なのです。
不登校の子が体調不良になってしまうメカニズム
それでは、このような体調不良はどのようにして起こるのでしょうか。
これらに共通しているものを見てみましょう。
- 学校に行こうとすると症状が出現、悪くなる
- 休むことが決まると、症状が軽減される
- 病院での検査をしても明確な異常が見当たらない
学校に行こうとする、休むという出来事が症状に関連し、病院での検査で明確な異常が見当たらないということは、心の問題が関連していると考えて間違いないでしょう。
このような心の問題が身体の症状として現れる疾患は心身症と呼ばれます。
そのような子の特徴は、次の記事で詳しく解説しています。
心身症とは
心身症とは次のように定義される疾患です。
「ストレスで胃が痛くなる」、「営業成績が振るわないことが頭痛の種」のような比喩表現があるように、心の不調は身体の不調に繋がることがあります。
本来であれば、何か悩みを抱えているなど心に不調がある場合は、誰かに相談するなど言葉にして外に出すでしょう。
しかし、悩みを外に出すことなく抱え込んでしまうことで、身体がSOS信号を出すために症状として表現するのです。
ストレスと自律神経系
心身症を発症している不登校児は学校に行こうとすると症状が強くなり、休むことが決まると症状が軽減します。
そのため、子どもの心の不調をもたらしている原因は「学校に行くこと」をストレスに感じていると考えてよいでしょう。
しかし、そのようなストレスがどのようにして症状に繋がるのでしょうか。
頭痛の場合
頭痛もストレスと深いかかわりがあることで知られています。
明確なメカニズムについては特定されていないものの、ストレスを受けることによって頭周辺の血管が収縮します。
これによって神経を刺激することとなり、炎症物質が放出され痛みを感じると考えられているのです。
腹痛の場合
ストレスによって腹痛が起こるのは、大腸の運動が活発になりすぎることと大腸の変化に過敏に反応しやすくなるからです。
人はストレスを受けると、脳と腸を繋ぐ「脳腸ペプチド」と呼ばれるホルモンが過剰に分泌されます。
この脳腸ペプチドは大腸の動きを促進する働きがあります。
そのため、過剰に放出された脳腸ペプチドにより、異常な大腸運動による炎症が引き起こされてしまいます。
加えて、脳腸ペプチドは内臓の運動に対する知覚過敏を引き起こします。
このように、ストレスによって大腸に関わるホルモンが過剰に分泌されることにより腹痛が引き起こされるのです。
起立性調節障害の場合
起立性調節障害はストレスによって自律神経の機能が乱れることで生じると考えられています
自律神経は私たちの身体の状態を保つために、無意識的に働いている神経のことを指します。
自律神経系には次の2種類があります。
- 交感神経:身体を活動的にするために働く
- 副交感神経:身体をリラックスさせるために働く
交感神経は脈拍、血圧の増加、筋肉の緊張など活動が出来るよう身体の調子を整える役割を持っています。
これに対し、副交感神経は脈拍や血圧を下げたり、筋肉を緩めるような休むための身体の調子を整えます。
この2つの神経系はバランスを取りながら働いているのですが、ストレスを受けるとこのバランスが崩れることが知られています。
本来、自律神経系は午前と午後で優位になるバランスが変化します。
昼間に活動を控えている午前中は交感神経系が優位になり、身体が活動できるよう身体の準備を行います。
これに対し、活動を終え、就寝をするために身体をリラックスさせようと、午後は副交感神経が優位に働きます。
身体が興奮している状況が抜けず、しっかりと休めないため、生活リズムの崩れや疲れやすさが身体に残ります。
そして、本来は起床後に働かなければならない交感神経が上手く働かず、午前中に心拍数や血流が上昇しません。
その結果、頭に必要な血が流れず、ふらつきを感じたり、立ちくらみが生じてしまうのです。
心身症の子が持つ特徴
それではどのような子が心身症を発症しやすいのでしょうか。
代表的なものとしては次のようなものが指摘されています。
- アレキシサイミア
- 特性不安
アレキシサイミアとは
アレキシサイミアとは自分の感情を知覚することが苦手という特徴です。
心身症患者によくあることですが、自分自身の気持ちや思いに対する気づきや自己表現が乏しく、カウンセリングが難航するということがあります。
このような特徴はストレスを受けたときの不快感についても同様に見られます。
多くの場合、何か嫌なことがあっとときは誰かに相談するなど、言葉にして表出するでしょう。
しかし、アレキシサイミアの強い人は、自分がどのような想いなのかを上手く捉えられないため、言葉にして表出することが出来ません。
その代わりとして、身体の症状として表現されるようになると考えられています。
特性不安とは
特性不安とは、不安の抱えやすさを表す個性の1つです。
そもそも、不安には次の2つの分類が存在します。
- 特性不安:不安になりやすさ、感じる頻度
- 状態不安:その時の不安の強さ
状態不安は、不安が生じているときの強さを表す概念です。
例えば、
・忘れ物がなかったかちょっと気になる…
このように不安を感じる出来事によってその「不安感」の強さは異なります。
このような不安が生じている最中の不安の強さは状態不安です。
これに対し、日常生活において不安を感じる頻度が高い、つまり不安を感じやすい人かどうかを表すのが特性不安なのです。
そして、原因が特定できない症状の訴えを表す「不定愁訴」と特性不安には強い関連があることが指摘されています。
作田ら(2003)は、不定愁訴を訴える不登校児の特性不安を調査したところ、健康な子どもと比べて特性不安が高いことが示されました。
これは、不登校児は不安になりやすい心配性な性格が強いことを示しています。
普通であれば、「まぁ、大丈夫だろう」と思えることでも過剰に心配してしまいやすいため、症状の元となるストレスを感じやすいのです。
次の記事でストレスと不登校の関係について詳しく解説しています!
体調不良の不登校児への望ましい対応
体調不良を訴えて不登校となっている子どもにはどのような対応が必要なのでしょうか。
自分の気持ちを表現できるようにする
体調不良の元は心の問題である場合が多く、ストレスによって不安や自責感を抱えているケースが少なくありません。
そのため、子どもの不安を和らげるように、ゆっくりと時間を設け、悩みを話しやすい雰囲気づくりが大切です。
例えば、子どものポジティブな部分や出来たことを強調して褒めることが挙げられます。
不安になりやすい心配性の子どもは自信が欠けていることが多いため、ポジティブな感情を増やし、自己主張できる環境づくりが求められるのです。
ソーシャルスキルについては次の記事で詳しく解説しています。
症状への理解を深める
子どもの多くは、なぜ自分が体調不良になっているのか理由が分かっていません。
ただでさえ心配性の性格であるため、自分は重大な病気にかかっているのではないかとより不安になってしまうでしょう。
そのため、子どもとの対話の中で、ストレスとなっている要因を探しましょう。
そして、ストレスによって心の調子が崩れると、身体の調子も悪くなることを伝えます。
こうすることで、なぜ自分が体調不良になっているのかという現状に過剰な不安を抱くことを避けることが出来ます。
そうしなければ、子どもは「自分の心が弱いからこうなってしまった」と自分を責めてしまうかもしれません。
生活習慣の改善
頭痛や起立性調節障害は身体を動かすことが難しかったり、睡眠などの生活リズムが崩れがちです。
そのため、生活習慣を整えるように意識して取り組む必要があります。
具体的には次のようなポイントを意識して取り組むと良いでしょう。
- 早寝早起きによって生活リズムを整える
- 運動や家事などを身体を動かすようにする
- 栄養のバランスの取れた食事をとるようにする
- 朝ごはんを欠かさないようにする
- 寝る前にテレビやタブレットなどの画面を見ないようにする
生活習慣をきちんとすることで、心や体の調子も整ってくるのです。
ストレス耐性の育成
そもそも、ストレスによって体調不良が起こっているのであれば、不登校児の体調不良はストレス反応の1つであるとも言えます。
ストレス反応はストレスに曝されることによって生じますが、この生じやすさには個人差があります。
不安を抱えやすい心配性の子どもはストレスを感じやすく、ストレス耐性が低い状態であると言えます。
そのため、ストレス耐性を高める関わりをするようにしましょう。
まとめ:心の不調が身体に現れている
今回は不登校と体調不良の関係について詳しく解説しました。
記事のポイントをまとめます。
- 不登校児が訴える体調不良には頭痛・腹痛・立ちくらみなど多彩な症状がある
- 不登校児の体調不良はストレスを言葉にして表現せず抱え込んでしまうために起こる
- 体調不良を直すためには、心の調子や生活習慣と整えることが必要
【参考文献】
- 村上佳津美(2009)『不登校に伴う心身症状 : 考え方と対応(<特集>小児をめぐる心身医学)』心身医学 49 (12), 1271-1276
- 福土審(2014)『過敏性腸症候群の病因』本消化器病学会雑誌 111 (7), 1323-1333
- 北見公一(2020)『ストレス関連障害としての慢性頭痛』心身医学 60 (1), 31-37
- 守口善也(2014)『心身症とアレキシサイミア』心理学評論 57 (1), 77-92
- 作田亮一・田副眞美・成田奈緒子・村上信行・永井敏郎(2003)『不定愁訴を有する不登校児の抱える「不安感」―State‐Trait Anxiety Inventoryによる心理学的評価およびSSRIの有効性―』 脳と発達 35 (5), 394-400