こんにちは、Nameck(なめっく)です。
今回のテーマはわがままと学校の行き渋りについてです。
なぜ学校に行かないのかと聞くと「ゲームがしたいから」、「勉強がつまらないから」などとわがままのように聞こえる不登校のケースがあるのも事実です。
このようなわがままと行き渋りの関係は心理学的にどのように理解することが出来るのでしょうか。
・わがままって心理学的にはどういう状態なの?
・わがままで不登校になっている子にはどうすればいいの?
・うちの子はわがままで不登校になっているのかな?
こういった疑問に答えるために、次のポイントを解説していきます。
【この記事で学べること】
- わがままが行き渋りに繋がる心理学的メカニズム
- 子どものわがままへの対処法
- わがままで不登校となっているのか判断が必要なケース
本ブログの内容は、科学的に分析された心理学論文の情報に基づいています。
それでは、さっそくわがままと不登校について学んでいきましょう!
わがままが行き渋りに繋がる心理学的メカニズム
わがままが理由でなかなか学校に行きたがらない子どもには「セルフコントロール」と呼ばれる力が欠けています。
セルフコントロールとは次のように定義されます。
私たちの生活の中で、面倒なことに取り組まなければいけなかったり、必要なことのために我慢をしなければならないケースは数多くあります。
そのような数々の欲求を我慢し、自分に必要な行動を取るようコントロールする力がセルフコントールなのです。
セルフコントロールには次の2種類があり、その中でも上記のような例は「改良型セルフコントロール」と呼ばれています。
- 調整型セルフコントロール:ストレス場面において発生する情動的・認知的反応の制御
- 改良型セルフコントロール:将来の結果を予測して満足遅延することで、より価値ある結果に近づくための制御
改良型セルフコントロールとは
改良型セルフコントロールは、将来の結果の予測から、現在の行動をコントロールする力のことです。
例えば、資格試験に合格し、給料を上げたい考えていたとします。
そのためには、朝早起きをして勉強をしたり、休みの日に行う趣味を我慢して時間を捻出しなければなりません。
しかし、そのためには次のような誘惑を我慢しなければならないでしょう。
・休みの日ぐらい好きな趣味をして楽しみたいなぁ…
このように、将来的に目標とする資格試験に合格するためには、現在感じている欲求や誘惑を我慢しなければならないのです。
そのような誘惑を我慢し、将来的により大きな利益を得るために必要な行動を取るように必要なのが改良型セルフコントロールなのです。
不登校とセルフコントロール
わがままで不登校になっているケースは次のような誘惑が挙げられます。
- 楽しいゲームをしたい:「学校がつまらないから行きたくない」
- 早起きをせず寝ていたい:「眠いから学校を休みたい」
- 面倒な勉強をしたくない:「勉強が面倒だから学校に行きたくない」
学校に行くことは将来の進路の幅を持たせたり、人と関わって生きていくための社会性を得る機会となります。
しかし、セルフコントロールが欠けていると、そのような将来必要なことよりも今やりたいこと(もしくはやりたくないこと)を優先してしまいがちです。
子ども自身が持っている「我慢強い」という特徴とは別に、セルフコントロールは次のような条件で活性化されやすいという特徴があります。
- 状況の困難度
- 行動の結果の明確さ
最もセルフコントロールが活性化されるのは達成が困難であり、行動の結果が明確である状況です。
例えば、貯金を例に挙げましょう。
まず、貯金するということは、非常に行動の結果が明確です。
そして、収入がとても多いわけではない場合、老後のために2000万円貯金するということは、そう簡単に達成できない困難な状況です。
そのため、老後2000万円の貯金を貯めなければならないと考えている人はセルフコントロールが活性化され、日頃から節約をしたり、休みの日に副業をして収入を増やそうとするのです。
学校に真面目に通ったからといって、必ずしも高収入の仕事に就くことや、幸せな家庭を築くことが約束されるわけではありません。
確かに大人になってから必要となる基礎を身に着けるために学校に行くことは非常に大切ですが、学校に行くことが何らかの明確な結果につながるとは言えないため、行動の結果が不明確なのです。
そのため、学校に行くということは子ども自身が持つセルフコントロール力の高低に左右されてしまいやすいと言えるでしょう。
我慢できることがもたらすメリット
我慢することができる、つまりセルフコントロールが出来ている人には様々な恩恵があることが分かっています。
例えば、改良型セルフコントロールの高い人は精神的に健康なことが示されています。
玉瀬・角野(2005)では、改良型セルフコントロールの能力を高めることで対人ストレスが軽減されるという結果が示されています。
また、改良型セルフコントロールは勉強への取り組みが阻害されないため、学業で高い成績を残しやすいとされます。
このように、セルフコントロールに優れていることは社会的に望ましいと考えられています。
子どものわがままへの対処法
それでは、子どものわがままで学校に行きたがらないような場合、どのような対応をすべきなのでしょうか。
登校刺激を与える
わがままで子どもが学校へ行き渋っているような状況では、毅然とした態度で学校へ行くように促す必要があります。
このような学校へ促すよう子どもへ働きかけることを登校刺激と言います。
確かに、子どもに学校へ行くように促すことが、かえって子どもを追い詰めてしまうケースもあります。
しかし、そのようなケースを除くと、不登校の解決のためには登校刺激を与えたほうが良いのです。
その理由は誤学習が起こってしまうためです。
例えば、ゲームがしたくて学校が休みたいと駄々をかんしゃくを起こしたとしましょう。
このとき「わかったから、今日は学校を休んでいいよ」と言ってしまうと、子どもは駄々をこねれば学校を休む許可をもらえるんだと誤って学んでしまいます。
どのような不登校のケースにも、学校に促すことは危険で、禁忌であるという誤った考えによって不登校が長期化し、専門家が介入した場合も修復困難となってしまうケースも少なくありません。
そのため、わがままが理由で学校へ行き渋るような場合には、正しい知識に基づいた登校刺激を与えるようにしましょう。
セルフコントロールを育む
子どものセルフコントロールを育むためには、生活習慣を身に着けることを意識した教育が効果的であることが分かっています。
山田(2011)では、次の3つの教育方針が子どもの我慢する力を育むのに有効なのかを検討しています。
- 自由体験型教育:様々な子どものやりたいことをさせる
- 学業優先型教育:塾に通わせるなど勉強に注力させる
- 生活習慣型教育:挨拶や早寝早起きなど生活習慣の確立に注力させる
その結果、3つの教育方針の中で、子どもの我慢する力を育むのに最も有効だったのは「生活習慣型教育」でした。
生活習慣型教育とは次のようなかかわりを重視する教育方針です。
- 学校の無い日にも早寝早起きをさせる
- 一日三食きちんと食事をさせる
- きちんと挨拶をする
このように見てみると何も特別なことはありません。
もし、これまでの家庭の過ごし方で生活習慣を整えるためにまだ出来ることがある場合は、取り組んでみることがおすすめです。
ゲームやテレビをする時間を決める、宿題は夕飯までに終わらせる、6時30分には毎日起きるようにする。
このような生活に終わりと始まりのメリハリをつける経験の積み重ねによって生活習慣は形成されます。
このような終わりと始まりをきちんと習慣として身に着ける経験をすることで、自然と「そろそろ学校に行く時間だから、準備をしよう」と葛藤を感じることなくスムーズに登校に移ることができるのです。
わがままで不登校となっているのか判断が必要なケース
子どもがわがままで学校に行きたがらない場合には、様子を見てみようなどと放置をせず再登校までの働きかけをしたほうが良いでしょう。
ただし、次のようなケースも場合によってはわがままであると一方的に決めつけてしまうと子どもを追い詰めてしまうため、注意が必要です。
いじめなど学校で深刻な問題が起こっている
子ども一人では対処が出来ない深刻な問題があるにも関わらず、ただ学校に行くよう押し付けてしまうことはNGです。
信頼関係を築いて、じっくりと話し合い学校で深刻な問題が起こっていないか確かめましょう。
「先生が頭ごなしに怒ってきて怖い」「いじめを受けている」など子ども一人では対所出来ない問題がないか確かめる必要があります。
また、「勉強についていけなくて困っている」、「いじめではないが対人関係のトラブル」を抱えているなどによって子ども自身が困っている可能性もあります。
そのような場合は大人の目線で「そのくらいのこと」と軽く考えず、周囲がサポートできることがないか探してください。
明確な問題がある場合は、まずその問題に対する対処を行い、子どもが安心して学校に通えるよう環境を整えるべきでしょう。
約束を守らない
子どもとの話し合った結果「明日は学校に行く」と約束をしたのに、次の日になって布団や部屋から出てこず、結果として今日も学校に行かなかったというケースがあります。
親側からすれば「一度学校に行くことを約束したのに、それを破ってわがままだ」という思いを抱くかもしれません。
しかし、子どもの真面目さから「とてもではないが学校に行けない」と打ち明けられない可能性はありませんか?
真面目な子ほど「みんなは学校に行っているのに…」と自分を責めてしまいがちです。
そのような状況で頭ごなしに「わがまま言ってないで学校に行きなさい」と押し付けてしまうと子どもは限界を超えて無理をしてしまいます。
子どもが約束通りに学校に行かなかったというときは、一度冷静になり、子どもと話し合ったときのことを思い出しましょう。
話し合いを早く終わらせるために、守る気のない口約束をしたようでなければ学校に行くよう促さず、休ませてあげるのが良いでしょう。
体調不良を訴える
普段は特段悪いところがなくても、朝になり登校するタイミングになって体調不良を訴えるケースです。
このような場合、ストレスが引き金となり心身症状を引き起こしている可能性が高いです。
そのため、子どもにとってストレスフルな学校へ行かせようとするとさらに症状が悪化してしまう可能性があるのです。
このような場合も子どもを無理に学校へ行かせることなく休ませてあげましょう。
まとめ:誘惑を我慢できる習慣作りをしよう
今回はわがままと学校の行き渋りの関係について解説しました。
記事のポイントをまとめます。
- わがままで学校に行き渋るのはセルフコントロールが育っていないから
- わがままに対しては正しい登校刺激を与え、セルフコントロールを育む教育が必要
- ケースによってはわがままのように見えるだけの場合もあるので、子どもの様子を見極める必要がある
【参考文献】
- 玉瀬耕治・角野文宣(2005)『対人ストレスとアサーション、セルフ・コントロールの関係』教育実践総合センター研究紀要 14 37-41
- 杉若弘子(2005)『改良型セルフ・コントロールを活性化する要因』奈良教育大学紀要. 人文・社会科学 54 (1), 63-67
- 山田美都雄(2011)『母親の教育方針と子どもの満足遅延耐性の関係–階層、子育て分担、子どもの意識に着目して』研究所報 / Benesse教育研究開発センター [編] 60 133-141