こんにちは、Nameck(なめっく)です。
今回のテーマは周りの目が気になってしまういい子と不登校の関係についてです。
とても大人しくていい子なのに「うちの子がなぜ不登校に?」と疑問を持つ方もいらっしゃるはずです。
・周りの目を気にして我慢いい子がどのようにして不登校になるのかな
・我慢してしまいがちな子どもが不登校から立ち直るにはどうすればよいの?
こういった疑問に答えるために、次のポイントを解説していきます。
【この記事で学べること】
- 周りの目を気にしてしまう子の特徴とは
- 周りの目を気にして我慢するいい子が不登校になるメカニズム
- 我慢しすぎるいい子が不登校から立ち直るためには
本ブログの内容は、科学的に分析された心理学論文の情報に基づいています。
それでは、さっそく周りの目を気にして我慢してしまういい子と不登校の関係について学んでいきましょう!
周りの目を気にしてしまう子の特徴とは
周りの目を気にして、我慢し過度に周囲に合わせてしまうことは心理学的に過剰適応と呼ばれています。
それでは、この過剰適応とはいったいどのような概念なのでしょうか。
周りの目を気にしすぎてしまう過剰適応とは
過剰適応とは、自分の気持ちを犠牲にして周囲の環境に合わせすぎてしまう状態のことを指します。
そもそも、心理学的な適応には次の2種類があることが知られています。
- 内的適応:幸福感や満足感を感じている心理的な安定状態
- 外的適応:周囲の環境に上手く合わせて生活が出来ている状態
結論からお伝えすると、この2つのどちらも健康に過ごすうえで欠かすことが出来ません。
このどちらかが欠けている状況では、精神のバランスが崩れてしまうことが指摘されています。
例えば、内的適応を優先して、外的適応が全く欠けている状態はどのようになるでしょうか。
自分勝手な人かな?
その通りです。
「早くお店に入りたいから、列に割り込んだ」や「遊びたいから、掃除をサボる」など自分のやりたいことのために、ルールやマナーを守らない場合は自分勝手と言われます。
自分勝手の逆は、外的適応を達成するために、内的適応を犠牲にしている状態になります。
つまり、「自分の気持ちや欲求を無理に抑え込むことで、無理やり周囲に合わせている状態」です。
これを過剰適応と呼ぶのです。
過剰適応の子どもの性格特徴
それでは過剰適応の子どもにはどのような特徴があるのでしょうか。
過剰適応の子どもは次の2つの性格を持っていることが研究によって示されています。
- 自己抑制
- 自己不全感
自己抑制は自分の感情や欲求を表に出さず、こらえてしまう特徴です。
例えば、「自分の思っていることは口に出さない」や「自分の気持ちを抑えてしまう」、「相手と違うことを思っていてもそれを相手には伝えない」などの特徴が見られます。
また、自己不全感は自分自身のことをあまりよく思わない傾向のことです。
例えば、「自分のあまり良くないところばかりが気になる」や「自分には自信が無い」などが挙げられます。
つまり、過剰適応になりやすい人は、「自分に自信が持てず、考えていることを外に出そうとしない」という特徴を持っているのです。
周りの目を気にして我慢するいい子が不登校になるメカニズム
過剰適応は外から見れば、他者に気を使って、周りに合わせてあげる心優しい子のように見えます。
しかし、自分の気持ちを我慢しすぎてしまう過剰適応の状態ではストレスフルな事態をより脅威であると捉え、ストレス反応が高まりやすいことが示されています。
ある研究では、不登校のうちその半分が過剰適応によるよるものであるという報告もあるように、不登校と過剰適応は深いかかわりを持っているのです。
それではどのようにして過剰適応は不登校と関連するのでしょうか。
素因ストレスモデルと不登校
ストレスに関する理論で代表的なものが素因ストレスモデルです。
素因ストレスモデルとは、一定の素因を持つ人、つまり傷つきやすい人がネガティブなイベントに遭遇した場合、不適応に陥りやすいとするモデルです。
前項で説明したように、過剰適応の人は自分に自信が持てず、気持ちを抑えこむ傾向にあります。
自分に自信が無いために、他者からの期待や要求を裏切り自分の価値が低くなることを防ぎたいと考えます。
そして、相手からの期待が本当に嫌なことであっても、気持ちを抑え込むことで相手に合わせようとするのです。
確かに、日常生活でも自分を抑えなければいけないことは多く、これは社会生活を送るうえで重要なスキルです。
しかし、これが性格傾向のような日常のどの場面でも自分を抑え、我慢して周りに合わせることになってしまえば、心の休まるときがなくなり疲弊してしまいます。
その結果、抑うつなどストレス反応が生じてしまうのです。
我慢しすぎによる息切れからの不登校
素因ストレスモデルにもあったように、過剰適応な人は自分の性格特徴から自分の思いを隠して、必死に他者に合わせて行動します。
これは、本当の自分の望みがかなえられない葛藤状態であり、欲求不満に陥ります。
しかし、過剰適応の人は自分自身の状態に気づきにくいという特徴があるため、無理した状態を必死に続けてしまいます。
その結果、気づいた時にはすっかり疲弊しており、学校へ行く気力がなくなってしまっているのです。
その結果、子どもの口からは「学校に行きたいけど、行けない」という言葉が出てくるのです。
また、自身のこころの不調に気づきにくいため、体の不調として出てくる可能性があります。
そのため、身体のどこかが悪いわけではなくても、「お腹が痛い」「めまいがする」などの身体症状が生じてしまい、不登校となってしまうのです。
我慢しすぎるいい子が不登校から立ち直るためには
過剰適応の子どもが不登校から立ち直るためにはどのようなことが必要となるのでしょうか。
大切なのは次の2つを育むことです。
- 自尊感情を育む
- ソーシャルスキルを育む
自尊感情を育む
自尊感情とは「自分の良い面も悪い面も含めて、これでよい」と受け入れる感情です。
自尊感情は精神的健康の指標の1つとして古くから心理学で注目されている重要概念ですが、特に過剰適応の子どもには必要です。
過剰適応の子どもは、自分に自信が持てず、自分の悪いところばかりに注目してしまう特徴(自己不全感)があります。
そのような状態では、自分の悪いところを許すことが出来ていません。
しかし、いくら自分の犠牲にして他者に合わせて行動しても自尊感情は育たず、不登校から抜け出すことが出来ません。
そのため、意識的に自尊感情を育て、自分に悪いところがあってもいいのだと自信を持たせてあげるべきなのです。
ソーシャルスキルを育む
過剰適応の子は自分の気持ちを抑え込み、表現しないという特徴(自己抑制)があります。
実際に福光・河村(2009)では、過剰適応の子どものソーシャルスキルの特徴を調べ、次のような結果を示しています。
このことは、対人関係において周囲に気遣うことはしているものの、自分からかかわっていくことは少ないということを示しています。
そのため、過剰適応の子に欠けている「かかわりのスキル」を伸ばすようアプローチすると良いでしょう。
注意点
一般的に不登校の子どもにはソーシャルサポートを行うことで不登校傾向が緩和されるという知見が知られています。
しかし、過剰適応の子にいきなりソーシャルサポートという支援を行っても有効ではありません。
石津(2008)では、過剰適応の子どもはソーシャルサポートによって不登校傾向が緩和されないという結果を報告しています。
ソーシャルサポートは困ったときに頼ることが出来るという安心感を与えるという意味で心理的健康に寄与します。
しかし、自分を抑え込んでしまう過剰適応の子は、困ったときにサポートしてくれる相手がいると分かっていても、自分から助けを求める行動を起こさないので不登校傾向が緩和されないと考えられます。
そのため、前述の自尊感情やソーシャルスキルを育み、過剰適応を緩和してからソーシャルサポートを行うようにすると良いでしょう。
ソーシャルサポートについては次の記事で詳しく解説しています。
まとめ:我慢しすぎることなく、自分を大切に
今回は周りの目を気にして我慢しすぎてしまう不登校の子の特徴について解説しました。
記事のポイントをまとめます。
- 周りを気にしすぎて我慢してしまうことは心理学的に過剰適応と呼ばれる。
- 過剰適応の子どもは、ストレスを感じやすく、無理しがちなため息切れを起こし、不登校になってしまう。
- 過剰適応の子どもは自尊感情やソーシャルスキルを育むべき。
【参考文献】
- 風間惇希(2017)『青年期における過剰適応研究の動向と今後の課題』名古屋大学大学院教育発達科学研究科紀要. 心理発達科学 64 127-140
- 石津憲一郎・安保英勇(2013)『中学生の学校ストレスへの脆弱性――過剰適応と感情への評価の視点から――』心理学研究 84 (2), 130-137
- 上野直輝(2022)『過剰適応な人における息切れの特徴 』 心理学叢誌 22 11-23
- 今村政彦(2021)『大学生における過剰適応と本来感・不安に関する研究』創価大学大学院紀要 42 203-221
- 福光奈緒子・河村茂雄(2009)『PC010 女子中学生における過剰適応とソーシャル・スキルの関連についての検討』日本教育心理学会大会 51 (0), 205-