こんにちは、Nameck(なめっく)です。
今回のテーマはコミュニケーション能力についてです。
不登校の子どもが抱えるストレスの大半は人間関係に起因していると言われます。
そして、その原因の一つにはコミュニケーション能力の不足であると考えられているのです。
・どうしてコミュニケーションが苦手だと不登校になるの?
・コミュニケ―ション能力を高めるためにはどうすればよいの?
こういった思いに答えるために、次のポイントを解説していきます。
【この記事で学べること】
- 心理学的なコミュニケーション能力とは
- コミュニケーション能力と不登校の関連とは
- 脱不登校のためにコミュニケーション能力を高める方法
本ブログの内容は、科学的に分析された心理学論文の情報に基づいています。
それでは、さっそく子どものコミュニケーション能力と不登校の関係について学んでいきましょう!
心理学的なコミュニケーション能力とは
心理学的なコミュニケーション能力を代表的な概念がソーシャルスキルです。
笑いを取ることのできる人や初対面でも積極的にコミュニケーションを取る人を指して「コミュ力」が高いなどと表現することもありますが、心理学的なソーシャルスキルは次のようなものであるとされています。
【ソーシャルスキルの代表的な定義】
- 人付き合いをうまくするための技術
- 対人関係を円滑に進める具体的な行動
ソーシャルスキルは提唱されてから歴史が浅い概念のため、様々な定義があります。
ソーシャルスキルは人間関係の複雑さと共に変化します。
それでは、小学生~高校生の各年代で必要とされるソーシャルスキルはどのようなものなのでしょうか。
小学生に必要なソーシャルスキル
小学生の時期に求められるものは、お友達の気持ちに寄り添ったコミュニケーションです。
そのため、必要とされるソーシャルスキルは次の2つであるとされています。
- 主張性スキル
- 規律性スキル
主張性スキル
主張性スキルは、自分の考えを他者の気持ちを尊重した形で伝えるスキルです。
具体的には次のようなものが挙げられます。
- 自分から友達を誘って遊ぶことが出来る
- 困っているお友達を手伝ってあげることが出来る
- 頑張っているお友達を褒めることが出来る
- 自分がしてほしくないことは「やめて」と言える
- 自分が困っていることを親や先生に話すことが出来る
主張性スキルが低い場合は、コミュニケーションの取り方が極端になりがちです。
例えば、自分が嫌なことがあるとすぐ怒鳴ったり、手が出てしまうなどがあるでしょう。
逆に、相手に合わせすぎてしまい、自分が嫌なことであっても「嫌だ」と正直に言えないことも主張性スキルが低いと言えます。
そのため、主張性スキルは自分も相手も大切したコミュニケーションをとることのできるスキルだと言えます。
規律性スキル
規律性スキルは集団のルールや規則を守ることのできるスキルです。
具体的には次のようなものが挙げられます。
- 自分勝手な行動はしない
- 自分の思い通りにならなくても我慢できる
- 使ったものをきちんと片づけることが出来る
- 当番や係の仕事を進んで行う
- きまりやルールを守ることが出来る
規律性スキルが低い場合は、周囲に「自分勝手」だという印象を与えてしまいます。
その結果、周囲から孤立してしまう可能性が高いのです。
つまり規律性スキルは集団でのマナーや周囲のお友達への気遣いなどの配慮を行う対人スキルであると言えるでしょう。
中学生に必要なソーシャルスキル
中学生に求められるソーシャルスキルは次の3つが挙げられます。
- 仲間強化スキル
- 自己統制スキル
- 関係維持スキル
仲間強化スキル
仲間強化スキルは、自分の役割を意識し、集団としての目標を達成できるようまとめ上げるようなスキルを指します。
具体的には次のようなものが挙げられます。
- 少数意見であっても自分の考えをはっきりと伝えられる
- 場面や状況を考えて、相手に伝わるよう発言できる
- みんなのやる気を高める発言が出来る
- リーダーとして指示を出したり、意見をまとめられる
- 迷惑な人に対し、きちんと注意する
このスキルが低ければ、集団の中での発言が苦手ということを表します。
様々な価値観や意見があることを受け入れたうえで、集団にとってポジティブな発言や行動が出来ることが仲間強化スキルであると言えるでしょう。
自己統制スキル
自己統制スキルは、ルールを守るだけでなく、状況に合わせて自分の欲求や行動をコントロールすることのできるスキルです。
具体的には次のようなものが挙げられます。
- 次のスケジュールを考え、事前に準備する
- 注意されたときなども、嫌な気持ちをあからさまに出さない
- 危険なことに誘われても、断る
このスキルが乏しい場合、周りに流されて非行に走ったり、反抗的な態度を取るなどの不適応が考えられます。
きちんと社会的に望ましいことを理解し、必要に応じて自分をコントロールするためのスキルなのです。
関係維持スキル
関係維持スキルは、他者とより親密な関係を築くための対人関係スキルです。
具体的には次のようなものが挙げられます。
- 自分の性格や趣味などを友達に話すことが出来る
- 困ったことや悩みを周囲に相談できる
- 仲間同士で協力しあって勉強することが出来る
- 共通の目標に向かって周囲と協力できる
個性や自我が芽生える時期ではありますが、その中で周囲とより親密になることは中学生の特徴の一つです。
そのために、自分の弱いところであっても周囲と共有し、助け合うような親密な人間関係を作るこのスキルは大切となるでしょう。
高校生に必要なソーシャルスキル
高校生になると、非常に高度なソーシャルスキルを求められるようになり、ソーシャルスキルは細かく分かれてきます。
具体的なスキルとしては次の通りです。
- 仲間強化スキル
- 自己統制スキル
- 関係維持スキル
- 援助要請スキル
中学生に求められるソーシャルスキルに加えて、新たに「援助要請スキル」が追加されています。
援助要請スキル
援助要請スキルは、困ったときに助けを求めることのできる力です。
具体的には、次のような行動が含まれます。
- 困ったことや悩みを友達に打ち明けることが出来る
- 自分の性格や趣味などを友達に話すことが出来る
- 勉強で分からないところを友達や先生に訊くことが出来る
相手に相談をする行動は中学生の関係維持スキルの中にも見られましたが、高校生では独立した1つのスキルとして抽出されています。
高校生では勉強する内容もより難しくなり、人間関係も複雑になっていきます。
そのため、ただ単に仲良しの友達に打ち明けることが出来るというよりも、複雑化した問題をクリアするために周囲に助けを求めることのできる力であると考えられます。
コミュニケーション能力と不登校の関係とは
不登校状態の子どもはソーシャルスキルに乏しい場合が多いことが研究で明らかになっています。
粕谷・河村(2004)では、学校へ通っている子どもと不登校状態の子どものソーシャルスキルを比較しました。
その結果、統計的に有意に不登校児はソーシャルスキルが低いことが示されたのです。
それは、ソーシャルスキルの有無が、学校生活における人間関係に大きな影響を与えるからです。
西村ら(2022)の研究では、次の2つのソーシャルスキルがそれぞれ学校適応に与える影響について検討しています。
- かかわりのスキル:友達と積極的にかかわろうとするスキル
- 配慮のスキル:対人関係や集団におけるマナー
かかわりのスキル
かかわりのスキルは学校生活満足度や精神的健康に関連することが示されています。
かかわりのスキルは自分から積極的に人間関係を作ろうとするソーシャルスキルです。
そのため、この能力が低いと友達が出来ず、学校内で孤立してしまう可能性があります。
そのため、かかわりのスキルが乏しければ、学校に対して満足感を感じることは少なくなるのです。
また、かかわりのスキルの不足していると自尊感情が低くなることが分かっています。
自尊感情は不登校から立ち直るために大切な心理的要因の1つとされます。
そのため、かかわりのスキルを高めることは、友人関係の充実を通じた学校への満足度を高めることに加え、不登校から立ち直るためのこころの力も養えるのです。
不登校と自尊感情の関係は次の記事で詳しく解説しています。
配慮のスキル
配慮のスキルは友人関係のトラブルを防ぐ効果があります。
配慮のスキルは人と接するうえでのマナーや相手への気遣いを含む対人スキルです。
このスキルが欠けると「自分勝手な人」という印象を与えがちですが、これは対人関係のトラブルを招く重大なリスクとなります。
学校で友達と喧嘩をしてしまった、先生に反抗的な態度で接してしまうなど攻撃性を伴った対人トラブルは不登校の原因である学校ストレスの代表的な要因です。
そのため、配慮のスキルを学ぶことは人間関係のトラブルを避け、不要な学校ストレスを感じないようにするためにとても大切なのです。
脱不登校のためにコミュニケーション能力を高める方法
ソーシャルスキルを高めるためには、SST(ソーシャルスキルトレーニング)という手法が有効であるとされています。
SSTは病院などの専門機関で、心理士やソーシャルワーカーなど心理学系の専門家によって実施されるプログラムです。
大まかなプログラムの流れは次のような形になっています。
- 説明する
- 練習をする
- フィードバックを行う
- 現実場面での実践を促す
説明する
何かを学ぶ上で、どのような目的で行うのか、学ぶことでどのように変わるのかということを事前に知っておくことは非常に大切です。
そのため、ソーシャルスキルのトレーニングを実施する前に、次のようなことを説明することが重要です。
- 人間関係についての基礎知識
- 他者の思考と感情の理解の仕方
- 自分の思考と感情の伝え方
- 人間関係の問題を解決する方法
人間関係についての基礎知識
人間の会話による対面でのコミュニケーションは、話す内容だけでなく非言語的な振る舞いも大きな意味を持っており、他者から受け取る情報の90%以上は、会話の内容以外の情報であると言われています。
このような意外と知られていない情報についても学ぶことでコミュニケーションで気を付けなければいけないところを意識して取り組むことが出来るでしょう。
他者の思考と感情の理解の仕方
相手はどのようなことを考え、感じているのかを理解できれば、円滑なコミュニケーションを行うことが出来るでしょう。
相手の言葉の理解の仕方や、表情・身振りから感じていることを読み取る方法を説明するようにします。
例えば、コミュニケーションにおいて相手の気持ちを考えるうえで重要なポイントは次のようなものが挙げられます。
笑顔(表情)で自分の目を見ながら(視線)、明るい声(口調)で話しかけてくる【ネガティブな状況のとき】無表情やしかめっ面(表情)で、下を向いたまま(視線)、大きな声や力のない小さな声(口調)で話しかけてくる
このような基本的なポイントを手掛かりに、相手がどのような気持ちなのかを学んでいくと良いでしょう。
自分の思考と感情の伝え方
まず、伝える前に自分の感じていることを的確に把握できていなかったり、考えをまとめることが難しいという子もいます。
その場合、自分が何を感じ、考えているのかを掴めるようサポートを行います。
そして、それをどのように伝えるのが望ましいのかについてを説明するのです。
人間関係の問題を解決する方法
他者から誤解される、理不尽なことを言われるなど、子どもは様々なトラブルに見舞われます。
そのため、このような問題にどのように対処すべきなのかという解決法を教えることがとても大切です。
練習をする
コミュニケーションにおいて大切なことを学んだあとは、実際に練習を通じて体験します。
その際には次のような流れで練習を行うと良いでしょう。
- モデリング
- リハーサル
モデリング
説明をするだけでは、適切なコミュニケーションが出来るようになるのは難しいでしょう。
かといって、いきなり「さぁ、やってみてください」といっても子どもは困惑してしまいます。
そのため、まずは見本を見せる必要がるのです。
モデルを用意して、実際にスキルを実行する場面を見せましょう。
【場面設定の例】
休み時間に隣の席の友達と喧嘩をしてしまいました。
次の日に学校で顔を合わせたときにどのように接しますか?
実際に見本の中で、よい例を見せることはもちろんですが、本人に悪い例も見せ、相手がどのような気持ちになるのかを考えさせることも大切です。
リハーサル
しっかりと説明を受け、見本を見た後は実際にスキルを行ってみましょう。
ただ、勉強と同じように上手くソーシャルスキルを出来るようになるためには何度も繰り返すことが必要です。
まずは、見本を真似して繰り返し練習することで、ぎこちなさも取れ、上達していくのです。
フィードバックを行う
自己流で練習を行っていても、正しくないスキルを繰り返しているようでは、誤ったスキルが定着してしまいます。
そのため、子どもの練習を見守り、上手にできていたところは褒めて伸ばし、直したほうが良いところはきちんと伝えます。
そのため、練習の中で見られた子どもの良かったところを積極的に探し、フィードバックすることを心がけるようにしましょう。
現実場面での実践を促す
せっかく練習をしても、本番で上手く出来ないのでは意味がありません。
そのため、出来るようになったスキルを実際に試してみるように促す必要があるのです。
例えば、教えたスキルを機会があるごとに思い出させる、教えたスキルが日常のどのような場面で使えるかを考えさせるなどです。
これによって、身に着いたスキルを子どもが実践できるようになるでしょう。
まとめ:コミュニケーション能力を高めて不登校から立ち直りましょう
今回はコミュニケーション能力と不登校の関係について解説しました。
記事のポイントをまとめます。
- 心理学的なコミュニケーション能力であるソーシャルスキルは、人付き合いを上手くするための技術
- 不登校児はソーシャルスキルが低い傾向にあるため、ソーシャルスキルを高めることが効果的
- ソーシャルスキルを高めるためには、技術を学ぶだけでなく実践することが大切
【参考文献】
- 新川広樹・富家直明(2016)『児童生徒の学年・学校段階に応じたソーシャルスキル尺度の開発ー学校現場におけるコミュニケーション教育への活用に向けてー』北海道医療大学心理科学部研究紀要 11 1-25
- 西村多久磨・藤原和政・村上達也・福住紀明(2022)『中学生のソーシャルスキルと学校適応問題 』心理学研究 93 (2), 161-167
- 粕谷貴志・河村茂雄(2004)『PB022 登校群と不登校群のソーシャル・スキルおよび自尊感情の検討(ポスター発表B,研究発表) 』日本教育心理学会総会発表論文集 46 (0), 131
- 福嶋祐貴(2015)『<研究論文>社会的スキルの明示的指導における二つの立場 : 協同学習論とソーシャルスキル教育論との比較検討』教育方法の探究 18 29-36