こんにちは、Nameck(なめっく)です。
今回のテーマは遊びや非行によって不登校になった子どもについてです。
悪い友達と学校をサボって遊びに行ってしまう子どもに、どのように接したらよいかわからない親御さんもいらっしゃるでしょう。
しかし、どのようなことが原因でこのような非行に繋がっているのでしょうか。
・どうすれば非行をやめさせることが出来るの?
・非行が原因で不登校な子どもにはどのように対応したらよいの?
こういった疑問に答えるために、次のポイントを解説していきます。
【この記事で学べること】
- 不登校児が非行に走る原因とは
- 非行をやめさせるために必要な社会的絆とは
- 非行をしている不登校児に対する必要なもの
本ブログの内容は、科学的に分析された心理学論文の情報に基づいています。
それでは、さっそく非行が原因の不登校児について学んでいきましょう!
不登校児が非行に走る原因とは
子どもが非行に走る原因は、「社会的規範意識」が薄れてしまうからです。
私たちは社会に生きるうえで、モラルや慣習に従って行動しています。
このような社会の中に存在する暗黙のルールのことを心理学では「社会的規範」と呼びます。
一般的に、この規範から逸脱した行動をとることは「良くないことである」として、行われません。
しかし、社会的規範を守らなければいけないという意識が薄れてしまうことで罪悪感なく、規範から外れた行動をとってしまうのです。
子どもが答える非行の理由
子ども自身は罪悪感や抵抗感なく、非行に走っている可能性があります。
実際、非行行為を行った子どもに対する、非行の理由の上位を占めるのは次のような理由です。
- やってみたかったから
- 友達に誘われて
- 別に悪いことではないと思った
- 特別な理由はない
- 刺激が欲しかった
このように、「非行を特別悪いことである」とは意識しておらず、規範意識が確立されておらず何となく非行に走っている子も多いように思えます。
規範意識が薄れてしまうメカニズム:規範的行為の焦点理論
規範意識が薄れ、犯罪や非行など社会的に望ましいとは言えない行動をとってしまうメカニズムを説明する理論としては「規範的行為の焦点理論が挙げられます。
この理論では、社会的規範を次の2つに分類します。
- 記述的規範:他者の行動を見ることによって身につく規範
- 命令的規範:道徳的に望ましいかどうかを学ぶことで身につく規範
信号無視という良くない行動を考える場合、記述的規範と命令的規範は次のようなものになります。
- 記述的規範:赤信号を無視している周りの人の存在
- 命令的規範:赤信号は止まらなければいけないという教育
このとき、記述的規範と命令的規範は信号無視とどのような関係にあったのでしょうか。
結論からお伝えすると、信号無視は周囲の行動や他者の存在によって大きく左右されるという結果が示されました。
つまり、命令的規範があったとしても、記述的規範が欠けていれば社会的な逸脱行動は起こりやすくなってしまいます。
これは、周りにいる友達が非行をしていれば、悪いことだとは分かっていても周囲に流されて非行を一緒にしてしまうことを表しています。
そのため、非行少年と仲良くしているということが原因の1つであると言えるでしょう。
規範意識が薄れてしまうメカニズム:社会的コントロール理論
規範逸脱行為を説明する他の理論としては「社会的コントロール理論」が挙げられます。
社会的コントロール理論では、非行が起こらないように抑制するコントロール要因が弱くなったり、欠如することによって起こると考える理論です。
そして、社会的コントロール理論は、非行や犯罪を抑制するためには、家族や学校、(素行の良い)友達などの集団に所属し、その中でしっかりとした繋がりを持つことが大切であるとしています。
そして、このようなつながりのことを「社会的絆」と呼ぶのです。
非行をやめさせるために必要な社会的絆とは
前項で説明したように、子ども達の非行を抑制するために必要なのは社会的絆です。
社会的絆は大きく次の4種類があることが知られています。
- 愛着
- 巻き込み
- 法的信念
- 将来への抱負
愛着
愛着とは子どもが周囲の人に対して抱く愛情や尊敬などの信頼関係のことを指します。
しっかりとした愛着があることによって、信頼できる人が大切にしているマナーや道徳観などを自分の中にも取り入れようとするのです。
この子どもの周囲の人には両親や学校の先生、友達などが挙げられます。
このような人と愛着を結ぶことは、非行をする周囲の子に流されてしまう記述的規範の欠如を防ぐことが出来ます。
ただ、遊びや非行が原因で不登校になっている子には、学校の先生や周囲に模範となる友だちといった人的資源が欠けている可能性が高いです。
そのため、親や学校以外の第3の居場所でしっかりとした愛着を形成できるようにすることが求められます。
巻き込み
子どもが非行以外に多くの時間やエネルギーを費やすことのできるものを見つけることが出来れば非行は少なくなります。
例えば、勉強であったり、スポーツやレジャーなどが挙げられます。
特段これといった理由なく非行をしている子どもは熱中できる楽しいことがないから非行をしている場合もあります。
非行ではなく熱中できる活動を見つけることが出来れば、非行に走る機会や時間が少なくなるのです。
法的信念
法的信念は、法律や社会規範が存在する必要性を認識していたり、信頼していることを指します。
これはただ単に、「法律を破ることは良くないことだ」と知っているだけでなく、法やルールに従って過ごしている人を尊敬しているなどのことも含まれます。
ある研究では、法律を尊重しなかったり、警察や先生を尊敬しなければ犯罪や非行に陥りやすいという結果が示されています。
このように法的信念も非行を防ぐために重要な役割を果たすのです。
将来への抱負
将来への抱負とは、その名の通り将来の目標です。
将来の目標がある場合、非行などの規範から逸脱した行為が自分の将来にとって大きなリスクとなります。
実際に、将来の目標を定め、努力している子どもはそうでない子どもに比べて犯罪や非行を犯す可能性が低いという結果が示されています。
また、大学など質の高い教育を受けたり、魅力的だがそう簡単にはなれない職業が目標となる場合、努力が必要です。
そのため、先述の慣習的活動の1つとして子どもが目標達成のためにエネルギーを注ぐようになるので、より非行に走りにくくなるのです。
非行をしている不登校児に必要なもの
それでは、子どもが非行に走っているとき、どのようなことが求められるのでしょうか。
非行に対するNG行為
非行など良くない行為をした際に行われがちな「制裁」はやめるようにしましょう。
そもそも、制裁を行うときには「もうそのような悪いことをしないように約束してほしい」という相手に協力を求めるメッセージが発せられています。
しかし、何らかの罰を与える「制裁」は相手にとって嫌なものであるため、相手からの信頼が低下し、協力行動が得られにくくなってしまいます。
人間は逸脱行為に対する「罰」に満足感を得ており、積極的に制裁を加えようとしてしまうことが脳科学からも明らかになっていますが、非行を減らすという目的達成のためには好ましくないと言えるでしょう。
家族関係を改善する
社会的絆において、良好な家族関係は愛着に該当します。
そのため、家族関係を良好にできるよう改善することは、非行を抑制することに有効です。
小保方・無藤(2005)では、周囲に非行をしている子どもがいても、自分が非行に走らないために重要な要因として親子関係が親密であることを示しています。
なぜ、家族関係が良好であると非行に走らなくなるのでしょうか。
そもそも、周囲に流されず自分が正しいと思うことを守るためには自制心が必要です。
荒居・石津(2014)では、次のような結果が示されています。
- セルフコントロールは非行傾向を抑制すること
- 家族関係における安心感は非行傾向を抑制すること
- 家族の中に居場所があることはセルフコントロールを高めること
そもそも、人は自分の安全が確保されることではじめて、自分をコントロールできるようになります。
このように、自分を上手くコントロールすることは不安を感じない安心できる居場所が必要となるのです。
そのため、家族の中で居場所を感じ、安心できる環境を持つことは、周囲に非行をする子が居ても流されず、自分をコントロールするうえで非常に大切なのです。
新しい居場所を見つける
家庭外にも新しい居場所を見つけ、非行グループから距離を置くことのできる環境が必要です。
斉藤(2002)の研究では次のような結果が示されています。
- 非行をしている仲間との接触は非行を促進する
- 先生への愛着は非行傾向を抑制する
- 高校受験のストレスが高くなるほど非行が抑制される
最後の高校受験のストレスが高くなるほど非行が抑制されるという結果は何を表しているのでしょうか。
高校受験にストレスを感じるということは、「受験に失敗したらどうしよう」という不安を抱えている状況です。
つまり、裏を返せば「行きたい進路が見つかっている」、「受験を成功させたい」と考えているということです。
巻き込み高校に受かりたいと思って勉強に打ち込むことは、社会的絆の将来の抱負や巻き込みに当てはまります。
新しい居場所において、モデルとなる先生と出会い、非行仲間から離れ、将来の目標を見つけることが出来れば、非行による不登校から脱することが出来るのです。
まとめ:非行の原因を正しく理解し、適切な対策を
今回は非行を原因とする不登校児について解説しました。
記事のポイントをまとめます。
- 非行の原因は「規範意識」の薄れ
- 非行をやめさせるためには「社会的絆」を強めることが大切
- 家庭や第3の居場所を見つけて、非行から立ち直ろう
【参考文献】
- 秦政春(2000)『子どもたちの規範意識と非行・問題行動 』大阪大学大学院人間科学研究科紀要 26 123-155
- 林世英(1989)『少年犯罪・非行に関する原因理論の実証的研究—社会的コントロール理論の検証— 』犯罪心理学研究 27 (1), 1-21
- 小保方晶子・無藤隆(2005)『親子関係・友人関係・セルフコントロールから検討した中学生の非行傾向行為の規定要因および抑止要因 』発達心理学研究 16 (3), 286-299
- 荒居知佳・石津憲一郎(2014)『非行傾向行為の抑止要因としてのセルフコントロールと家族関係に対する居場所感についての検討』富山大学人間発達科学研究実践総合センター紀要 9 113-123
- 斉藤知範(2002)『非行的な仲間との接触, 社会的ボンドと非行行動 』教育社会学研究 71 (0), 131-150