こんにちは、Nameck(なめっく)です。
今回のテーマは不登校のデメリットについてです。
不登校でいることに漠然とした不安があるけれど、結局何が問題なのかよくわからないという方も少なくありません。
・不登校のままだとどうなってしまう可能性があるのかな?
・やっぱり学校に行かせたほうがいいの?
こういった思いに答えるために、次のポイントを解説していきます。
【この記事で学べること】
- 不登校のデメリットとは
- 不登校状態を続けることのリスク
- 本当に学校には行かなければいけないのか
本ブログの内容は、科学的に分析された心理学論文の情報に基づいています。
それでは、さっそく不登校のデメリットについて学んでいきましょう!
不登校のデメリットとは
不登校のデメリットとしては次のようなものが挙げられます。
- 学習面の遅れ
- 精神的健康の低下
- 社会性を育む機会の損失
学習面の遅れ
文部科学省(2021)による「不登校児童生徒の実態把握に関する調査報告書」によれば、学校を休んでいるときの過ごし方は次のようなものでした。
出典:文部科学省(2021)『不登校児童生徒の実態把握に関する調査報告書』
このグラフを見ると、不登校状態による家での過ごし方では「テレビ視聴」や「インターネット・ゲーム・動画視聴など」が多くなっていることが分かります。
また、勉強面を見てみると、「自宅での学習」をよくしていた・ときどきしていたと答えたのは半数に満たないことが分かります。
その間、学校では必要な単元の勉強が進められているため、必然的に学習面の遅れが生じやすいことは想像に難くありません。
精神的健康の悪化
そのような悠々自適とも思える過ごし方が見えてくる不登校ですが、子ども自身はその状況に満足はしていないようです。
同調査では、学校を多く休んだことに対する感想として次の結果を挙げています。
最も多くなっているのは「もっと登校すればよかったと思っている」であり、学校に行かないことへの後悔や罪悪感を抱いている姿が思い浮かびます。
また、「これから自分はどうなってしまうのか」や「周囲からどう思われているだろう」のような不安も抱えています。
他の研究でも、不登校状態にある子どもは学校に行かなくていい安心感を抱きつつ、学校に行かない自分に違和感を感じる葛藤状態にあることが指摘されています。
このような葛藤は精神的健康を損なうため、テレビやゲームなど自分の好きなことが出来る時間があったとしても不登校状態は精神面であまり良い状態とは言えないのです。
社会性を育む機会の損失
学校というのは、独り立ちする前に小さな社会振る舞いを経験する場でもあります。
友だちと遊びの中で社会性を育む、集団行動の中で適切な振る舞いを学ぶ、先生という親以外の大人との距離感を学ぶ。
不登校になってしまうと、このような机の上で行う勉強とは違った学びを得る機会が損なわれてしまいます。
これこそ一番の不登校のリスクであるとも言えます。
私たちは赤ちゃんの頃に養育者と信頼関係を築き、それを基として他者とコミュニケーションを取ります。
子どもは成長するにつれ、愛着対象を親から周囲の親しい人へと移行させていきます。
【愛着対象となるための基準】
- 身体的・情緒的なケアをしていること
- 子どもの生活の中における中心的な存在として継続性があること
- 子どもに対して情緒的な投資をしていること
このような対象として代表的なものが学校で出会うことのできる「友達」であったり「先生」です。
このような親密な関係の広がりは、子どもの「自立」のためには不可欠なものであると考えられています。
しかし、不登校で接する人が家庭内だけに限られてしまうと、新しい出会いや社会性を育むための機会を失ってしまうと言えるでしょう。
不登校状態を続けることのリスク
不登校状態になると多くのデメリットがあることは分かりましたが、その状態が続くとどうなってしまうのでしょうか。
確かに調査報告の数はそれほど多くはありません。
しかし、いくつかは不登校の子どものその後に関する調査が存在します。
【不登校児の社会適応率】
治療有り | 治療なし | |
斎藤(2016) | 73% | データなし |
河合(1986) | 85% | データなし |
門(1998) | 83% | 72% |
また、文部科学省(2014)は不登校だった中学3年生に追跡調査を行い、進学状況を次のように報告してます。
- 高校への進学率:85.1%
- 大学・短大・高専への進学率:22.8%
- 専門学校への進学率:14.9%
このようなデータを見ると、不登校になったからといって「将来が失われた」と悲観するのは早そうです。
ただし、安心しきってしまうのはよくありません。
このデータはあくまでも不登校となった子がその後社会適応しているということだけを示しており、不登校期間に何もしなくても自分一人で立ち直ったということではありません。
不登校の3割ほどは不適応であるという現実があり、伊藤ら(2003)の報告によれば「引きこもり」の61.4%は小・中・高・大いずれかで不登校の経験があるのです。
本当に学校には行かなければいけないのか
これまで、不登校になることで成長の機会が失われてしまうデメリットとそのリスクについて解説してきました。
これらを踏まえると次の2つのどちらかを選択する必要があるでしょう。
- 学校にまた通えるようサポートをする
- 学校以外の学びの場を提供する
学校にまた通えるようサポートする
不登校にはデメリットやリスクがあることは事実ですが、だからといって無理やり学校に行かせようとするのは大きな間違いです。
そのようなかかわりでは状況がさらに悪化してしまうリスクすらあります。
そのため、まずは不登校がどのようにして起こっているのかを適切に理解する必要があると言えるでしょう。
学校以外の学びの場を提供する
学校に行くことだけが選択肢ではありません。
今は学びの多様化が社会的にも進められるようになっています。
代表的な学校以外の学びの場としては次のものが挙げられます。
- フリースクール
- 不登校特例校
どちらも不登校となった子どもに「無理のないよう配慮をした学び」の場を提供する施設ですが、次のような違いがあります。
フリースクール | 不登校特例校 | |
運営 | 民間(NPOや株式会社など) | 行政 |
文科省の定める学校 | × | 〇 |
出席の扱い | △(場合によって認められる) | 〇 |
全国の学校数(R6.1時点) | 400校以上 | 32校 |
転校手続きの有無 | 不要 | 必要 |
不登校特例校は「不登校の子ども」へ配慮を行った国の認める学校です。
しかし、全国に32校しかないため、近隣に不登校特例校がない場合はフリースクールを検討しても良いかもしれません。
フリースクールや不登校特例校については次の記事で詳しく解説しています。
まとめ:不登校のデメリットを知り、適切な対応を
今回は不登校状態がもたらすデメリットを解説しました。
記事のポイントをまとめます。
- 不登校状態には「学力」、「精神的健康」、「社会性」などの点で様々なデメリットがある
- 不登校になった後も立ち直る可能性は十分にあるが、適切な対応が必要
- 再び学校に通えるようサポートをするか、新たな居場所を見つけるよう対応することが大切
【参考文献】
- 文部科学省(2021)『不登校児童生徒の実態把握に関する調査報告書』資料2 【全体】不登校児童生徒の実態調査結果 (mext.go.jp)
- 斎藤万比古(2016)『(増補)不登校の児童・思春期精神医学』金剛出版
- 門 眞一郎(1998)『「どうなるの?」を考える(予後論) 門眞一郎・高岡 健・滝川一廣(著) 不登校を解く ― 三人の精神科医からの提案 ―(pp.168‐199)』ミネルヴァ書房
- 河合 洋(1986)『学校に背を向ける子ども ― なにが登校拒否を生み出すのか ― 』NHK ブックス
- 文部科学省(2014)『「不登校に関する実態調査」 ~平成18年度不登校生徒に関する追跡調査報告書~』
- 伊藤順一郎・吉田光爾・小林清香ほか(2003)『「社会的ひきこもり」に関する相談・援助状況実態調査報告 平成 14 年度厚生労働科学研究費補助金心の健康科学研究事業 地域精神保健活動における介入のあり方に関する研究-10 代・20 代を中心とした「ひきこもり」をめぐる地域精神保健活動のガイドライン(最終版)』