こんにちは、Nameck(なめっく)です。
今日のテーマは共同体感覚についてです。
アドラー心理学で述べられる様々な理論や技法はすべてこの「共同体感覚」を高めるためにあり、アドラー心理学の目指す最終的なゴールであると言えます。
・共同体感覚が低くなるとどうなってしまうの?
・どうすれば高めることが出来るの?
こういった思いに答えるために、次のポイントを解説していきます。
【この記事で学べること】
- 共同体感覚とは
- 共同体感覚が欠如することで起こる問題
- 共同体感覚を高めるための方法
本ブログの内容は、科学的に分析された心理学論文の情報に基づいています。
それでは、さっそく共同体感覚について学んでいきましょう!
共同体感覚とは
共同体感覚は、アドラー心理学で目指すべきゴールであり、アドラーの考える「幸せ」の形であると言えます。
共同体感覚は非常にあいまいな概念ですが、次のような定義づけをなすことが出来る概念です。
共同体感覚とは、共同体にとって有益な行為を善、無益な行為を悪とする価値観のことである。
また、近年の共同体感覚を扱った研究では、共同体感覚は次の3つの要因から構成されることが示されています。
【共同体感覚を構成する要素】
- 所属感・信頼感:信頼できる人に囲まれているという感覚
- 自己受容:現在の自分を受け入れることが出来ている感覚
- 貢献感:他者へ積極的に貢献できている感覚
アドラー心理学は「全ての悩みは人間関係に関連するものである」とするなど、人との繋がりを重視していることが大きな特徴です。
そのため、人間関係が良好である状態こそアドラー心理学のゴールであると考えることが出来ます。
共同体感覚を持っている人の5つの特徴
共同体感覚を持っている人は次のような特徴が見られるとされています。
【共同体感覚を持っている人の5つの特徴】
- 共感:仲間の関心に自分も興味を持っている
- 所属感:所属するグループの一員だという感覚を持っている
- 貢献感:仲間のために積極的に役に立とうとする
- 相互尊敬・相互信頼:関わる人たちとお互いに尊敬・信頼し合う
- 協力:自ら進んで協力する
このような特徴を持っている人はどのような人だというイメージが湧いてきますか?
その通りです。
皆さんも誰かに感謝された、誰かの役に立つことができたという瞬間に充実感や自分の存在価値を強く感じられるという経験はありませんか?
共同体感覚を持っている人は充実感などのポジティブな感情を経験しやすく、自分の存在価値を見失うことなく幸せな生活を送ることが出来るのです。
嫌われてしまってはいけない?
結論からお伝えすると、誰かから嫌われてしまうと共同体感覚がなくなったり、低くなってしまうということはありません。
そもそも、誰からも嫌われない人はいないのです。
人間関係の良し悪しには「相性」が関係しており、自分と「合う人・合わない人」がいるのは何も不思議なことではありません。
もちろん、相手といがみ合って四六時中喧嘩をしていても全く関係ないということはありませんが、「なんだか自分とは合わないな」と思う人にも無理をして自分を偽り相手に合わせることも良くないでしょう。
それでは、どのようにすれば良好な人間関係を築くことが出来るのか、アドラー心理学で述べられてる6つのポイントをご紹介します。
共同体感覚が欠如することで起こる問題
それでは、共同体感覚が欠如してしまうとどのような問題が起こるのでしょうか。
【共同体感覚が欠如することで起こる問題】
- 孤立してしまう
- 精神的健康度が低くなる
孤立してしまう
先ほどの共同体感覚を持っている人の特徴と真逆の状況を考えてみましょう。
【共同体感覚が欠如した人の特徴】
- 仲間の関心に自分は興味がない
- 所属するグループの一員だという感覚を持っていない
- 仲間のために積極的に役に立とうとしない
- 関わる人たちとお互いに尊敬・信頼し合えない
- 自ら進んで協力しようとしない
このような特徴からどのような人がイメージできますか?
共同体感覚が欠如すると、相手への興味がなくなるため、協力したり、他者に貢献することへの関心がなくなってしまいます。
その代わりに見えるのは自分が得をすることになります。
こうして他者の利益になることは行わず、自分が得をすることをだけを行うという「自分勝手な人」の出来上がりです。
このような自分勝手な人は次第にグループから孤立してしまうでしょう。
精神的健康度が低くなる
共同体感覚が欠如すると精神的健康度が低くなることが分かっています。
自分が好きなことや得をすることしか興味を示さない自分勝手な人は確かに自分が好きなように行動しているのでストレスを感じたりすることは少なく、精神的健康度が高そうなイメージがあります。
しかし、共同体感覚と精神的健康の関連を調べた姜・宮本(2022)によれば、共同体感覚が低くなるほど抑うつ傾向や社会活動障害が高まるという結果が示されました。
これは、共同体感覚が低い人はうつっぽく、社会生活を送るうえでの問題を抱えやすくなるということが考えられます。
これはなぜなのでしょうか。
共同体感覚は「所属感・信頼感」、「自己受容」、「貢献感」の3つの要素から構成されていることはこれまでにご説明しましたが、この中でも精神的健康に影響を与えるのは「自己受容」だとされています。
周囲の人と協力しない自分勝手な人は相手から受け入れられる経験が乏しくなります。
他者から認められる経験は自分の価値を考えるうえでの「ものさし」・基準となるわけですが、これが欠如してしまうため、「今の自分のままでよい」と自分を受容できなくなってしまいます。
その結果、共同体感覚の中の自己受容がしっかりと形成できず、精神的健康度が低くなってしまうのです。
それではどのようにすれば共同体感覚を育み、高めることが出来るのでしょうか。
共同体感覚を高めるための方法
アドラー次のように述べ、共同体感覚はこれからでも育み、高めることが出来ると指摘しています。
(共同体感覚は)生得的可能性であり、意識的に発達させられねばならない
これは、「人は誰でも生まれながらにして共同体感覚の種を持っており、それを意識的に育て花を咲かせることが出来る」ということを表しています。
そのため、会社や学校、家庭などで良好な関係を築くことが出来ず、共同体感覚を十分に持てていない人でも意識的な取り組みで変えることが出来るのです。
良好な人間関係を築くための6つの姿勢
アドラー心理学では、どのような人とも仲良くしなければならないとは述べてはいませんが、良い関係を築きたいと考えているのであれば率先して次の6つの姿勢を実勢することを推奨しています。
【人間関係を良好にする6つの姿勢】
- 相互尊敬:相手の尊厳を大切にし、礼儀正しく接する
- 相互信頼:相手を無条件で信頼する
- 協力:同じ目標を持ち、コミュニケーションをとる
- 共感:相手の考えに関心を持つ
- 平等:違いを受け入れ、相手の自由を認める
- 寛容:価値観を押し付けない
この6つの姿勢が相手との良好な関係を導きます。
相手が自分に親切にしてくれない限り、相手を信用したり尊敬したりしないという受け身の姿勢ではいけません。
人間関係は相互作用を持っているため、相手との関係を変えたいと思うのであれば、まずは自分が変わらなければならないでしょう。
自分を振り返る
共同体感覚の向上には自分を振り返る「セルフモニタリング」が有効であることが指摘されています。
相手へ協力するということは自分の行動が相手にとって役に立つという確信が必要です。
このような思いから中々相手に親切にしたり協力を申し出にくいかもしれませんね。
そのようなときに重要なのが「セルフモニタリング」なのです。
自分の行動への確信を高める最も大きな要因は過去の成功体験とそれに伴って経験されるポジティブな生理的反応であることが分かっています。
このとき、セルフモニタリングを行うことはその時に感じられた感情へと注意を移すこととなり、その時に取った行動の理由や考えを振り返ることは「次も上手くいくだろう」というポジティブな見通しの貴重な情報源になるのです。
勇気づけ
共同体感覚を育てるための根源となるのは、行動を起こすために必要なエネルギーです。
アドラー心理学ではこのような人間を根幹から支え、「困難に立ち向かうエネルギー・活力」のことを勇気と呼びます。
共同体感覚を育むために相手に協力しようとしても上手くいかなかったり、自分を振り返って嫌なことを思い出してしまうかもしれません。
しかし、そのような困難にも挫けず、共同体感覚を育てていくための努力を継続するためのエネルギーが勇気であり、これは勇気づけと呼ばれるアドラー心理学の技法で高めることが出来るのです。
まとめ:共同体感覚を高めて、周囲から愛される幸福感を得ましょう
今回はアドラー心理学の目標である「共同体感覚」について解説してきました。
記事のポイントをまとめます。
- 共同体感覚は良好な人間関係とそれによって達成される幸せの状態
- 共同体感覚が欠如すると孤立し、精神的健康が低くなる
- 共同体感覚はこれからでも高めることができ、その根底には勇気の存在がある
【参考文献】
- 野田俊作(1992)『共同体感覚の諸相』アドレリアン第5巻第2号,1-9
- 上條正太郎・檜野華鈴・矢野保志斗・赤坂真二(2021)『共同体感覚を育む集団SST』日本学級経営学会誌 3 (0), 1-10
- 姜信善・宮本兼聖(2022)『共同体感覚が社会的適応および精神的健康に及ぼす影響についての検討 : 共同体感覚の形成要因としての養育態度に焦点を当てて』 富山大学教育学部紀要 1 (1), 25-46