こんにちは、Nameck(なめっく)です。
不登校に対して「甘えている」や「ずるい」といったネガティブな評価をするべきでしょうか?
不登校の子がいることで周囲からどう思われているかが大きな負担になっている保護者さんのこんな疑問をお持ちではないですか?
・どうして不登校が甘えだと思われてしまうの?
・不登校に対する周囲のネガティブな目にはどのように対処したらいい?
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こういった疑問に答えるため、次のポイントを解説していきます。
【この記事で学べること】
- 不登校は甘え?ずるいことなのか?
- 不登校が甘えだと思われてしまう理由
- 不登校へのネガティブ評価に対する対処法
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本ブログの内容は、科学的に分析された心理学論文の情報に基づいています。
それでは、さっそく不登校へのネガティブな評価への対処法について学んでいきましょう!
不登校は甘え?ずるいことなのか?
結論からお伝えをすると不登校は甘えやずるいことではありません。
その理由は、不登校という現象は子ども自身がストレスに苦しんだ結果引き起こされているものだからです。
例えば、クラスのみんなの前で発表するときに上手くいかず、不安になって学校に行くのが嫌になってしまったとします。
この時に、「人前で恥をかくなんて誰にでもあることで、学校を休む理由になんかならない」や「みんな失敗するかもと不安な中チャレンジしている」などの理由から、不登校を甘えやずるいなどと考えてしまうのです。
しかし、これは間違いです。
人にはそれぞれストレス耐性には個人差があるのです。
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するべきことは不登校になった子どもが苦しんでいる・困っているために学校に行けなくなったという事実を正しく理解し、その子どもの目線で起きている現象を考えることです。
不登校と学校ストレスの関係については次の記事で詳しく解説しているので、気になる方は是非お読みください。
本当に甘えであるケースとは
不登校であることをひとまとめにして「甘え」だと批判することは大きな間違いです。
しかし、次のようなケースではどうでしょうか?
・勉強がめんどくさいから学校に行きたくない
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本来、子どもには通らなければならない発達課題があり、授業で得られる知識だけではなく社会性や自分らしさの発見など身に着けるべきものがあります。
しかし、そのためにはゲームや遊びなどを一時的に我慢しなければならないでしょう。
このような、やりたいことを優先し、やりたくないことはすべて拒否するという姿勢は「甘え」であると言えるでしょう。
それでは、なぜこのような現象が起こるのでしょうか。
心理学的には満足遅延耐性と呼ばれる力が十分に育っていないために生じると考えられています。
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不登校を甘えだと思ってしまう理由
不登校が甘えやずるいなどと思う理由には社会的規範と呼ばれるものが関係しています。
社会的規範とは、「模範、判断、評価または行為などのあるべき手本・基準」のことです。
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言い換えれば常識とも言えるでしょう。
社会的規範には次のようなものが挙げられます。
- 法律や条例のような法規範
- 会社や学校などの行動の指針である行動規範
- サークルや友人同士などの集団における集団規範
- 社会的慣習や常識のような多くの人に共有されている関連に基づく規範
このようにして見てみると、守るべき決まりとしてしっかりと明示されているものから常識や当たり前のように暗黙の了解として人々の間で共有されているものまで幅広く存在しています。
規範を破るとどうなるのか
このような社会的規範を破るような言動を取ることは集団からの反感を招きます。
その理由は、そもそも社会的規範が集団としてトラブルを起こすことなく、平和に過ごすために作られるものだからです。
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それだけでなく、「公共の場所で大きな声を出して騒がない」のような暗黙の了解・マナーも人々が気分良く過ごすために私たちに共有されているでしょう。
そのため、このような規範を破る行動を取ると周囲からの反感を買ってしまったり、悪いことをしているような罪悪感を抱いてしまうのです。
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他者から「不登校は甘え」だと言われるケース
金子(2007)の研究では、次のような結果が示されています。
社会的規範に対する意識は人それぞれで、「自分だけ守れば別に構わない」と考える人や「自分は守るつもりはないが、周囲の人は規範に沿って行動すべきだ」と考える人など様々です。
その中でも、自分自身も規範をきちんと守り、他の人も守るべきだと考えている真面目で厳格なタイプの人は、その規範から外れた人に攻撃性を向けやすいのです。
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「不登校は甘え」だと言われたことはないが人目が気になるケース
実際に不登校は甘えだと言われたことはなくても、周りから甘えだと思われているのではないかと気にしてしまうケースもあり得ます。
これは自己意識が関連しています。
自己意識とは、「自分自身に注意を向け、自己を意識する状態」のことであり、次の2つに分けられます。
- 私的自己意識:自分が感じている感情や気分、自己評価など内面に注意を向けること
- 公的自己意識:自分の容姿や行動が他者の目にどう映っているかなど自分の外面に注意を向けること
それぞれの自己意識を理解するために、女性1人でラーメン屋さんに言った場面を挙げてみましょう。
このラーメンすっごく美味しそう!
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ラーメン屋さんに女性1人で入るって変かな…?
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このように私的自己意識は外側から見ることのできない自分の考えや感情などです。
それに対し、公的自己意識は他の人の目に映る自分の姿に対して注意を向けるという違いがあります。
つまり、不登校は甘えではないかと人目が気になることは、外から観察できる自分の家庭の状況が周囲にどのように映ってしまっているかに注意が向いている「公的自己意識」が高い状況だと言えます。
この公的自己意識は他者からの評価に注目するため、「変に思われているのではないか」という対人不安を高める効果があります。
この不安は精神的健康を低めると同時に、周囲と同じように振る舞う同調行動を促進します。
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また、子ども自身も学校に行かない自分は甘えているのではないかと自分を責めてしまっているケースもあり、そのような場合に無理な登校刺激を与えるのは逆効果です。
次の記事でそのような真面目な子どもの特徴や対処法を解説しています。
不登校へのネガティブ評価に対する対処法
それでは、このようなネガティブな評価に対してどのような対処をすればよいのでしょうか。
他者から「不登校は甘え」だと言われるケースへの対処法
不登校状態の家庭に対して、ずるいや甘えなどと非難することは心理学的には対人葛藤状況であると言えます。
対人葛藤とは次のように定義されます。
個人の行動、感情、思考の過程が、他者によって妨害されている状況
つまり、それぞれの人の間で価値観が異なるために対立が起こっている状況です。
対人葛藤状況は社会生活における主要なストレス源であるため、何らかの対処を行う必要があります。
そのための方法が対人ストレスコーピングです。
対人ストレスコーピングとは、あらゆる対人関係におけるストレスへの対処法のことです。
心理学研究では対人ストレスコーピングには次の3パターンがあることが知られています。
- ポジティブ関係コーピング:積極的に人間関係を改善するために取り組む
- ネガティブ関係コーピング:積極的に関係を壊そうとする取り組み
- 解決先送りコーピング:問題を軽視し、ストレス状態から回避しようとする取り組み
この中で一番ストレスに対して有効なのはどれでしょうか?
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意外かもしれませんが、精神的健康度という観点で言えば、解決先送りコーピングが最も望ましいことが知られています。
確かにポジティブ関係コーピングはストレスの原因である対人関係のトラブル解決に取り組みます。
しかし、必ず成功するとは限らず、トラブルが起こっている相手と自ら交流しようとすることで少なからず本人にはストレスがかかってしまいます。
そのため、解決先送りコーピングによってその相手と距離を取るほうが有効なのです。
解決先送りコーピングの具体例には次のようなものが挙げられます。
- 気にしないようにした
- こんなのものだと割り切った
- 自分は自分、人は人と思った
- 何もせず、自然の成り行きに任せた
- そのことは忘れるようにした
本当に解決しなければいけないのは不登校を甘えだと押し付けてくる人との人間関係の修復ではなく、子どもの不登校状態です。
騒音とは距離を置き、無駄なストレスを抱えないことが大切です。
「不登校は甘え」だと言われたことはないが人目が気になるケースへの対処法
自分がどのように周囲に思われているか気になるという公的自己意識は性格の1つであり、すっかりなくしてしまうのは難しいと考えられています。
しかし、周囲の目にどう映っているかに注意を向けがちな性格だとしても、そこから不安が生じにくくなれば生き辛さが軽減するはずです。
そのカギとなるものが「自我同一性」だと考えられています。
自我同一性とは自分の人生の目的など自分に関する確信的な感覚のことです。
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金(2005)によれば、同一性が確立され「自分らしさ」に確信を持てているときには公的自己意識が高くても対人不安が抑制されるという結果が示されています。
自我同一性に関する研究では、周囲の人と違う部分があると自覚しているほど「自分への確信」がしっかりしていることが示されています。
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周囲と距離を置くことはかえって自我同一性に混乱をもたらし、自分らしさが失われてしまいます。
そのため、何よりも大切なのは子どもが無理することなく過ごすことのできる第3の居場所を探すこととよいでしょう。
そこで得られる出会いや子どもの成長を感じることが出来れば、他の家庭との違いも受け入れ、不登校は甘えだと思われているかもしれないという不安から解放されるのです。
まとめ:不登校を一概に甘えだと断定するのは大間違い
今回は不登校に対する甘えやずるいなどといったネガティブ評価との向き合い方について解説しました。
記事のポイントをまとめます。
- 不登校は甘えやずるいことではなく、学校ストレスによってもたらされている
- 不登校を甘えと考えることには社会的規範が関係している
- 不登校に対するネガティブな声からは距離を取り、子どもが安心して過ごせる環境を整えるべき
【参考文献】
- 金子泰之(2007)『逸脱者に対する攻撃的反応を生起させる規範意識の影響 』犯罪心理学研究 45 (1), 25-34
- 金子俊子(1995)『青年期における他者との関係のしかたと自己同一性 』発達心理学研究 6 (1), 41-47