こんにちは、Nameck(なめっく)です。
今回のテーマはプライドの高さと不登校の関係についてです。
不登校状態の背景にはプライドが傷つくことを避けるために引き起こされているケースもあります。
・プライドが高いことと不登校はどのように関連するの?
・プライドが高くて不登校の子が立ち直るためにはどうすればいいの?
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こういった疑問に答えるために、次のポイントを解説していきます。
【この記事で学べること】
- 心理学的なプライドが高い状態とは
- プライドの高さが不登校に繋がるメカニズム
- プライドの高い子が不登校から立ち直るために必要なものとは
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本ブログの内容は、科学的に分析された心理学論文の情報に基づいています。
それでは、プライドの高さと不登校の関係について学んでいきましょう!
心理学的なプライドが高い状態とは
心理学的なプライドの高さは仮想的有能感と呼ばれます。
仮想的有能感とは次のような状態を指します。
有能さは「他者よりも優れている」という自信や誇りなどの感覚であり、ポジティブな性質を持っています。
しかし、それが「仮想的」であるとはどのようなものなのでしょうか。
一般的に有能感は「テストで学年1番を取れた」や「かけっこでクラスで1番早い」など他者よりも優れた成績を残した事実をもとに形作られます。
しかし、仮想的有能感での、「自分は優れている」という感覚は、そのようなポジティブな経験に基づいていません。
理由もなく「周りの人は大したことない」と見下すことで、相対的に自分が優れていると思い込み有能さを感じようとするのです。
そのため、仮想的有能感によって得られる人よりも優れている感覚は、本当の自信、すなわち自尊感情とは大きく異なるのです。
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ネガティブな感情
仮想的有能感を持っている人は自分の痛みに関わるネガティブな感情を感じやすいことが研究で示されています。
特に、怒りや敵意、憂鬱感などのネガティブな感情を感じやすく、日常的に感情が不安定なのです。
その一方、他者への共感に欠けるところがあり、不運な事故に対して怒りや悲しみも感じにくいことが示されています。
プライドの高さが不登校に繋がるメカニズム
それでは仮想的有能感は不登校とどのような関係性にあるのでしょうか。
仮想的有能感は次のような不登校となる理由を生み出します。
- プライドを守ろうとする
- 対人関係のトラブル
- 学業面での問題
プライドを守ろうとする
そもそも、仮想的有能感は人を見下すことによって無理やり作られた有能さの感覚です。
そのため、本当の自信は全く育っておらず、失敗や傷つきによって自己評価が下がってしまうことを大きく恐れます。
そのため、勉強の成績や運動などの競争の場面において、自分の実力のなさが露呈しないよう、不登校となり自分を守ろうとするのです。
対人関係のトラブル
このような感情の不安定さは対人関係の問題にもつながりやすいです。
仮想的有能感の高い人は、「人から受け入れられたい、仲間に入りたい」という欲求が高いものの、「周囲から受け入れられず、拒絶されている」ように感じていることが示されています。
また、ある研究では、仮想的有能感を持つ人は対人関係において相手に怒りや敵意などネガティブな感情を抱きやすく、時間経過によってその感情が高まっていくこと示されています。
つまり、人を見下す仮想的有能感の人はますます対人関係を悪化させてしまいます。
このような対人関係のトラブルがストレスとなり、学校へ行きたくなくなってしまうのです。
学業面での問題
周囲の人を見下す仮想的有能感は、可能な限り自らの努力を行わず自己評価を維持しようとする方略です。
そのため、勉強を頑張ろうとするやる気に乏しく、勉強を「やらされている」という感覚が強いという特徴があります。
また、根拠のない自信を身に着けてしまっているため、しっかりと事前に勉強をしなくても上手くいくだろうと楽観的に考えてしまう傾向にあります。
そのため、勉強を先延ばしにしてしまい、成績も悪くなってしまうのです。
その結果、成果が残せず、勉強をしなければいけない学校がつまらなく、苦痛に感じてしまい「学校に行きたくない」という事態が生まれてしまうでしょう。
プライドの高い子が不登校から立ち直るために必要なものとは
仮想的有能感の子どもが不登校から立ち直るためには、仮想的有能感から抜け出すことが必要です。
仮想的有能感は次の公式によって示されます。
仮想的有能感=人の見下しやすさ×自身の無さ
そして、周囲を見下す傾向は自信をつけてあげれば自然となくなっていきます。
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それでは自尊感情を高めるためにはどのようにすればよいのでしょうか。
仮想的有能感の人の自尊感情を高めるための方法
松本ら(2013)の研究では、より学校の先生と親密な人間関係を築いていくことが仮想的有能感を低減させるうえで有効だという結果が示されています。
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そもそも、仮想的有能感は現代の希薄になった人間関係における不全感を補うために人を見下して満足しようとする傾向です。
そのため、教師が自分のことを理解し、認めてくれたと受け入れられる経験が自尊感情を高めるうえで大切になるのです。
このような深い人間関係を作ることは勉強面でもメリットがあります。
勉強で分からないところが出てくると、周囲に解き方のヒントを教えてもらうよう助けを求めることが必要です。
安達(2020)では、仮想的有能感の子どもは助けを求めても拒絶されるかもしれないという恐れから、援助を求められないということが示されています。
そのため、自分が困ったときにも助けてくれるというしっかりとした信頼関係を築いていくことで勉強面のつまずきも解消できるのです。
しかし、不登校という状況では学校の先生と深い人間関係を築いていく機会は作りにくいことが事実です。
そのため、家庭と学校以外の第3の居場所が求められて来ると言えるでしょう。
まとめ:プライドの高い子どもが安心できる人間関係を作ろう
今回がプライドの高さによって不登校に陥る子どもの特徴について解説しました。
記事のポイントをまとめます。
- 心理学的なプライドの高さは仮想的有能感と呼ばれる
- 仮想的有能感は学校でのトラブルやプライドを守るために不登校に陥る
- 仮想的有能感の子どもが不登校から立ち直るためには信頼できる先生との関係性構築が重要
【参考文献】
- 速水俊彦(2011)『仮想的有能感研究の展望』教育心理学年報 50 176-186
- 名取幸平・佐柳信男(2016)『仮想的有能感と不登校傾向の関係』日本教育心理学会第58回総会発表論文集 58 83-
- 小浜駿(2014)『先延ばしのパターンと学業遂行および自己評価への志向性』教育心理学研究 62 (4), 283-293
- 安達未来(2020)『仮想的有能感が教師への学業的援助要請に及ぼす影響 : 対人関係における拒絶感受性と孤独感の調整効果に着目して』教育心理学研究 68 (4), 351-359