こんにちは、Nameck(なめっく)です。
今回のテーマは不登校の子どもへのサポートについてです。
不登校の子どもには何かサポートをしたいと思っている親御さんは多いでしょう。
しかし、どのようなサポートをすれば良いのかよくわからない方という方がほとんどではないでしょうか。
・どうして不登校の子にサポートをしたほうが良いの?
・どのようにサポートをすればよいのかな?
こういった思いに答えるために、次のポイントを解説していきます。
【この記事で学べること】
- 不登校の子に必要なソーシャルサポートとは
- ソーシャルサポートと不登校の関係
- ソーシャルサポートの効果的な実践方法
本ブログの内容は、科学的に分析された心理学論文の情報に基づいています。
それでは、さっそく不登校の原因について学んでいきましょう!
不登校の子に必要なソーシャルサポートとは
心理学研究を通じて、不登校の子にはソーシャルサポートと呼ばれる支援が必要であることが分かっています。
ソーシャルサポートとは、周囲の人々から得られる社会的な支援・サポートのことです。
それではソーシャルサポートとは具体的にどのような支援なのでしょうか。
具体的・情緒的サポート
ソーシャルサポートの種類は次の2つがあります。
- 道具的なサポート
- 情緒的なサポート
道具的なサポートとは、問題を解決するために必要なものを提供したり、必要な情報を提供するサポートです。
このサポートは問題解決に必要な手段を提供するため、ストレスフルな問題の解決に有効です。
例えば、勉強が分からない子に分かりやすい参考書をあげたり、野球をやりたい子に近くのクラブチームを教えてあげるなどが挙げられるでしょう。
これに対し、情緒的サポートは問題に直面して傷ついたり困ったりしている人に寄り添ったり、行動や考えを認めてあげるなどの感情面でサポートを行うことです。
確かに道具的サポートは問題解決に直結するものですが、いくら解決法を教えたところで、本人に自信が無かったり、大きく傷ついているような状況では問題解決は難しいでしょう。
そのため、本人の傷つきをケアしたり、自信が持てるよう背中を押してあげる情緒的サポートも重要になってきます。
例えば、テストで悪い点を取ってしまった子を慰めたり、クラス替えで緊張している子に励ましの声をかけてあげることなどが挙げられます。
このどちらのほうが不登校の子に必要かという優劣はありません。
その子の抱えている状況の必要に合わせて、それぞれのサポートを行う必要があるのです。
心理学的な自信である「自己効力感」を高めることは不登校から立ち直るために重要です。
自己効力感と不登校の関連は次の記事で詳しく解説しています。
実行された・知覚されたサポート
ソーシャルサポートには別の考え方もあります。
それは次のような分類の仕方です。
- 実行されたサポート
- 知覚されたサポート
実行されたサポートとは、過去の一定期間に他者から実際に得られたソーシャルサポートの量のことです。
つまり、その名のとおり実際にサポートをしてもらった経験のことです。
それ以外の知覚されたサポートって何?
知覚されたサポートとは、いざというときにどれくらい周囲の人が自分のことを助けてくれるかという利用可能性あるいは将来の予想を指す概念です。
つまり、実際のサポートの有無に関わらず「いざというときに頼れる」と頭に思い浮かべられるサポートの量を表します。
しかし、ソーシャルサポートは本人が困ったり、悩んでいなければ実際には与えられないものです。
そのため、ソーシャルサポートが与えられた経験が多いということは、困ったり悩んだ経験が多いということを示します。
自分で解決できず悩んだり、困った経験が少ない人は精神的健康度は高くなりますが、必然的に実行されたサポートの量も少なくなってしまいます。
その一方で、知覚されたサポートは必要な時に助けてもらえるという安心感も含んだ概念であるため、困った状況にあるかどうかに影響されません。
ソーシャルサポートと不登校の関係
ソーシャルサポートは学校ストレスを和らげ、不登校傾向を抑制することが研究によって示されています。
それでは、実際にはどのようなかかわりを持っているのでしょうか。
ストレス軽減効果のあるソーシャルサポート
ソーシャルサポートは嫌な出来事も解決できるだという見通しを与えるため、ストレス軽減の効果があります。
ソーシャルサポートは古くからストレスを和らげる効果があると指摘されてきました。
現在では、特にストレスが高い状況でソーシャルサポートが与えられるとストレス軽減効果が高いという考え方が主流になっています。
そもそも、ストレスというのは、何らかの出来事があったときに次の2つの評価がなされます。
- 一次評価:起こった出来事が自分にとって嫌なものかを評価する
- 二次評価:起こった出来事を自分で解決できそうか判断する
ストレスを感じる出来事の代表例として「理不尽なことで怒られる」ことが挙げられます。
このとき、自分の為を思って指導してくれている(一次評価)と思えば、ストレスだとは感じません。
また、自分のせいではないのに怒られる理不尽な状況では、解決ができる(二次評価)とも思えないでしょう。
その結果、理不尽な状況で怒られるのはストレスを強く感じるのです。
ソーシャルサポート(特に知覚されたサポート)は、このうち二次評価に大きな影響を与えます。
・友人関係の悩みを相談できる友達がいる
このように、サポートは例え嫌なことがあったとしても、解決できるから大丈夫だという安心感が得られるため、ストレスを強く感じずに済むのです。
不登校傾向とソーシャルサポートの関連
ソーシャルサポートは学校ストレスを和らげ、不登校傾向を抑制する効果があります。
そもそも、不登校状態はソーシャルサポートに欠けている状態であることが研究で示されています。
菊島(1997)によれば、不登校状態の子どもは次のような状態にあります。
- 具体的なアドバイスや手助けをしてくれる人が身近にいない
- 親に自分の気持ちを分かってもらえない
- 教師からのサポートが少ない
そして、同研究では不登校傾向とストレス、ソーシャルサポートの関連を検討しました。
その結果、ソーシャルサポートは、学校でのストレスを緩和することによって、ストレス反応である不登校傾向が抑制されることが示されたのです。
そもそも、学校において困難なこと、嫌なことに直面し、それをどのようにして乗り越えるかを学ぶことに重要な意味があります。
いじめなど本人のこころの傷になってしまう重篤な場合を除き、無用にストレスを減らそうとすることもかえって子どもの成長を妨げてしまうでしょう。
そのため、日常的なストレスを減らそうとするのではなく、子どものストレス耐性や問題解決能力を高めるよう働きかけるべきなのです。
ソーシャルサポートはそのために重要な役割を果たしており、不登校の子には特に必要なものなのです。
ソーシャルサポートの効果的な実践方法
ソーシャルサポートを効果的に実施するためには、相手が必要とする際に手を差し伸べることが必要です。
この記事を読んでいる方の中には、どのように子どもと接したらよいのかわからないという方もいらっしゃるでしょう。
そこで、両親にできるサポートの1例をご紹介します。
親が行うと良いサポートの具体例
前章で説明したように、サポートの種類は「道具的サポート」、「情緒的サポート」の2種類がありました。
それぞれのサポートでの具体的な声掛けの例は次のような形になります。
道具的サポートの例
道具的サポートは何らかの問題の解決に役立つような助言・手助けや情報を提供するサポートです。
具体的には次のようなサポートの例が挙げられます。
- 問題解決方法についてアドバイスしてくれる
- 新しいことを学びたいときに教えてくれる
- 必要な情報を与えてくれる
- 決心がつかないときに、アドバイスしてくれる
- 間違っているときに、指摘してくれる
情緒的サポートの例
これに対し、情緒的サポートは愛情や信頼などを感じることのできるサポートでした。
具体的には次のようなものが挙げられます。
- 遊びに連れて行ってくれる
- 個人的な話や悩み・愚痴を聞いてくれる
- 気持ちを落ち着かせてくれる
- 努力や良いところを褒めてくれる
- 自分(子ども自身)を信頼してくれる
ソーシャルサポートを実施するうえでの注意事項
具体的なソーシャルサポートを見ていると、どれも子どもが困っているときに手を差し伸べたり、気持ちを受け止め、優しく接することのように思えます。
そのため、ソーシャルサポートは何も特別なことをする必要はないのです。
しかし、良かれと思ってサポートをしようとしても悪影響を及ぼすこともあるため、注意が必要です。
現に中島・丹野(2019)では、サポートの受け取り手が有難いものであると感じていない場合、ソーシャルサポートが感情のコントロールに悪影響を及ぼすことが示されています。
それでは、適切なソーシャルサポートをするためにはどのようなことに気を付ければ良いのでしょうか。
態度や子どもへの理解
サポートを提供する親の姿勢はソーシャルサポートの効果を左右する重要な要因です。
例えば、このような態度で声掛けをしてもむしろ逆効果です。
- 憐れみをもって接する態度
- 問題の原因となっている人からのサポート
- 問題をよく理解していない人からのサポート
- 自分(子ども自身)の気持ちや考えを尊重しないサポート
このような接し方はNGです。
確かに、将来困らないようにするために学校に行き、知識や社会性を身に着けることは大切です。
しかし、いくら「学校に行ったら楽しいこともあるかもよ」などと背中を押そうとしても、子どもにとっては、自分の気持ちも理解しようとせず、押し付けてくるばかりだという思いが募るでしょう。
サポートの内容
サポートの内容についても良く考えなくてはいけません。
NG例は次のようなものが挙げられます。
- 実行不可能なアドバイス
- 分かり切ったアドバイス
- プレッシャーになるアドバイス
- 子どもがしてもらいたいこととは異なるサポート
お友達に声をかける勇気が出ないのに「声をかけてみようよ」と無理なアドバイスをされたり、テストで悪い点を取ってしまったときに「勉強を頑張ろう」などと分かり切ったことを言われても、本人にはうるさいだけです。
また、落ち込んでいて一人になりたいときに「どうしたの?」としつこく聞くようでは、子どものしてほしいことに沿っているとは言えないでしょう。
このように詰め寄ってしまうのは、子どもにプレッシャーとなり逆効果なので避けるべきでしょう。
子どもの心理状態
ソーシャルサポートを実施する際には、子どもの心理状態にも気を配りましょう。
次のようなときには無用なサポートはかえって逆効果になってしまいかねません。
- 大きく傷ついていて、サポートを受け取る心の余裕がないとき
- 疲れてしまっていて、とにかく休みたいとき
- 自分に自信が無く、アドバイスで落ち込んでしまう性格
サポートを受ける側にある程度の余裕がなくてはかえって負担となってしまうでしょう。
特に、自分に自信が無い状態は心の健康を損ねるリスクが高い状態です。
心理学的には自尊感情が低い状態だということが出来ますが、その際はまず自尊感情を高めるためのアプローチを採用すべきでしょう。
子どもと親の関係性
サポートをする側、される側の人間関係の距離感にも気を使いましょう。
次のような場合は要注意です。
- 親密度が足りていない場合
- 信頼関係が十分に築けていない場合
これはあくまで人間関係であり、一方が「親密である」、「信頼関係を築けている」と思っていても意味がありません。
子どもからと十分な信頼関係が築けていないにもかかわらずアドバイスをしても、子どもからすれば「一方的に押し付けてきた」と迷惑に捉えられかねません。
そのため、日ごろのコミュニケーションからしっかりとした信頼関係を築くよう努力する必要があるのです。
有効なソーシャルサポートに必要なもの
有効なソーシャルサポートの実施に必要となるのは「ソーシャルスキル」です。
ソーシャルスキルは対人関係を円滑に保つために必要なスキルのことです。
心理学では古くからソーシャルスキルの脆弱性モデルにおいてソーシャルスキルとの関係を次のように説明されてます。
- ソーシャルスキルが不足する
- 困っているときに身近な人へSOSを伝えられなくなる
- 適切なソーシャルサポートが受けられなくなる
- ストレスが生じ、心理的不適応(不登校)が引き起こされる
子どもの中には、自分が困っているということを上手く自覚できない、もしくは悩みを打ち明けることを恥ずかしいなどと考え打ち明けられない子もいます。
そのため、子どものソーシャルスキルを伸ばし、必要なサポートを行えるようにすることが重要です。
また、子どもが打ち明けやすい温かい姿勢を持つことも重要です。
城(2013)では、相談を打ち明けやすい雰囲気を作るスキルが、自己開示やソーシャルサポートの増加に影響を与えることを示しています。
打ち明けやすい雰囲気を作るためのスキルは次の通りです。
- あいづちを多く打つ
- ジェスチャーを使う
- じっくり考えながら聞く
- 目を見ながら話をする
- 真剣な表情でいる
- 相手の話を遮らないようにする
- 相手を否定しないようにする
- 相手が話した内容を自分の言葉で言い換えて確認する
- 子どもの気持ち・考えを引き出すような質問を使う
日々のコミュニケーションからこれらのことを意識することで、悩みを打ち明けやすい信頼関係が築かれ、必要なソーシャルサポートを提供できるようになるでしょう。
不登校とソーシャルスキルの関係は次の記事で詳しく解説しています!
まとめ:子どもとの信頼関係を築いて必要なサポートを行いましょう
今回は不登校の子に対するソーシャルサポートの重要性を解説してきました。
記事のポイントをまとめます。
- 不登校の子の周りの人から得られるソーシャルサポートには道具的サポートと情緒的サポートという種類がある。
- 不登校の子にはソーシャルサポートが不足している傾向があり、ストレスを軽減するソーシャルサポートをより行うべき。
- ソーシャルサポートの効果的な実践のためには、子どもとの信頼関係や適切なソーシャルスキルの獲得が重要。
【参考文献】
- 稲葉昭英・浦光博・南隆男(1987)『「ソーシャル・サポート」研究の現状と課題 』哲學 85 109-149
- 菊島勝也(1997)『不登校傾向におけるストレッサーとソーシャル・サポートの研究 』健康心理学研究 10 (2), 11-20
- 中島 実穂, 丹野 義彦『有難くないソーシャルサポートはむしろ逆効果ソーシャルサポートに感じる期待と効力感がその効果に与える影響』日本心理学会大会発表論文集 83 (0), 2A-004-2A-004
- 城佳子(2013)『大学生の自己開示・ソーシャルサポートが被受容感に及ぼす影響の検討 : 被開示スキルとの関連を通して 』人間科学研究 34 63-72