こんにちは、Nameck(なめっく)です。
今日のテーマは楽観性と悲観性の違いです。
ポジティブの反対はネガティブだと思っていませんか?
・私はネガティブだからポジティブにはなれない…
・楽観的の反対って悲観的でしょ?
こういった疑問に答えるために、次のことを深掘りして解説していきます。
【この記事で学べること】
- 楽観性・悲観性とは?
- 楽観主義の反対は悲観主義なのか?
- 楽観性・悲観性の持つ心理的機能の違い
本ブログの内容は、科学的に分析された心理学論文の情報に基づいています。
それでは、さっそく楽観性と悲観性の違いについて学んでいきましょう!
楽観性・悲観性とは
心理学において、楽観性と悲観性は次のように定義されています。
物事がうまく進み、悪いことよりも良いことが生じるだろうという信念を一般的に持つ傾向
【悲観性】
物事がうまくはかどらず、悪い結果を予測する傾向
楽観主義の反対は悲観主義なのか?
これまで長い間、楽観主義の反対は悲観主義であるとする両者を対極にした一次元によって捉えられてきました。
楽観性の高さを測定するLife Orientation Test(LOT)という心理検査では、次のような楽観性と悲観性に関する質問項目をまとめて、1つの因子に集約することが最も統計モデル上望ましいという結果を示し、楽観性と悲観性は対極の概念であるという主張がなされてきたのです。
この批判を受け、外山(2013)は楽観性と悲観性は心理的・身体的健康の関連において異なった役割を果たす独立した概念であると考え、両者を別々に測定することのできる楽観・悲観性尺度を作成しました。
つまり「うまくいくかも」というイメージが頭に思いつきにくいから、「失敗するかも」というイメージしやすいということではないのね!
この尺度での、楽観性と悲観性は次のような次元でとらえられます。
- 楽観性・悲観性が高い人
- 楽観性が高く、悲観性は低い人
- 楽観性が低く、悲観性が高い人
- 楽観性も悲観性も低い人
このように楽観性と悲観性を独立した概念とする立場により、楽観性そして悲観性がそれぞれ持っている機能の違いを詳細にとらえることが出来るようになったのです。
それでは、事項で楽観性と悲観性の心理的機能の違いについて詳しく解説していきます。
楽観性・悲観性の心理的機能の違い
近年の研究から、楽観性と悲観性はストレスコーピングを通じて、精神的健康に与える影響が異なっていることが指摘されています。
そもそも精神的健康は次の2つに大別されます。
- 幸福感や充実感などポジティブな感情を感じやすいこと
- 抑うつや不安などネガティブな感情を感じにくいこと
そして「1」には楽観性の高さが、「2」には悲観性の高さが関連するということが分かっています。
ストレスコーピングとは
ストレスコーピングとは、ストレスの悪影響を軽減するために取られる対処法のことです。
不快な出来事に対し、適切なコーピングを行うことが出来れば、イライラや不安、不眠などのストレス性の症状を抱えなくて済むと言われています。
そのため、ストレスコーピングを有効に用いることが出来るかどうかということは精神的健康を保つために必須の要素であると考えられているのです。
楽観性とストレスコーピング
楽観性の高い人は、状況に応じてストレスコーピングを柔軟に使い分けることが出来るという特徴があります。
そもそも、ストレスコーピングの中には望ましいものと望ましくないものがあるのですが、楽観性の高い人は次のようなコーピングを行いやすいことが知られています。
- 情報収集:問題となる出来事に関する情報を集める
- 計画立案:集めた情報を基にどのように解決するべきか計画を立てる
- 肯定的解釈:問題のもたらす良い面を考え、プラスにとらえる
これらのコーピングは問題を解決し、本人の精神的健康を守る機能を持つストレスコーピングであるため望ましいとされてます。
それだけではなく、楽観性の高い人は重要な場面には肯定的解釈を用いるものの、重要ではない場面では積極的なストレスコーピングは行わず認知的資源を節約するという特徴があるのです。
このような柔軟なコーピングの使い分けによって、楽観性の高さは幸福感や充実感などポジティブな感情の高さに影響する心理的要因であるということが分かっています。
- 楽観性の高さは幸福感などポジティブな感情の高さにつながる
- 楽観性の低さは、ネガティブ感情の高さとは関連しない
悲観性とストレスコーピング
それとは逆に悲観性の高さは不安や抑うつ、無気力などネガティブな感情の高さに関連することが指摘されています。
楽観性は場面の重要度によってコーピングを使い分け、効率よくストレスに対処することに対し、悲観性の高い人は不適応的な先延ばしというコーピングを重要度に関わらず用いやすいという結果が示されています。
先延ばしは問題の解決を後回しにすることにより、その場のストレス反応を和らげようとするストレスコーピングです。
このようなコーピングスタイルの特徴から、悲観性の高さは不安や抑うつ、無気力などのネガティブ感情の高さにつながることが分かっています。
- 悲観性の高さは抑うつ・不安などネガティブな感情の高さにつながる
- 楽観性の低さは、ポジティブな感情の高さとは関連しない
まとめ:楽観性と悲観性は別物
今回は楽観性と悲観性を取り上げ、解説してきました。
記事のポイントをまとめます。
- 楽観性の反対は悲観性ではない
- 楽観性は幸福感や充実感などポジティブな感情の高さに関連する心理的要因
- 悲観性は抑うつや不安などネガティブな感情の高さに関連する心理的要因
楽観性と悲観性が別物であるということはネガティブな人も楽観性を高めることが出来ると言えるでしょう。
【参考文献】
- 坂本真士・田中江里子(2002)『改訂版楽観性尺度(the revised Life Orientation Test)の日本語版の検討』健康心理学研究 15 (1), 59-63
- 外山美樹(2013)『楽観・悲観性尺度の作成ならびに信頼性・妥当性の検討』心理学研究 84 (3), 256-266
- 渡辺将成・長谷川晃(2017)『楽観性と悲観性がコーピング方略に与える影響 ―重要性の異なる2場面を設定した上での検討―』カウンセリング研究 50 (2), 73-80