こんにちは、Nameck(なめっく)です。
今日のテーマはポジティブ心理学についてです。
これまで、人間のネガティブな面にフォーカスが当てられることの多かった心理学はポジティブ心理学の登場によって大きな変化が起きました。
・ネガティブな私にポジティブ心理学は関係ないでしょ?
・幸せの形って人それぞれだし、それを対象とする学問って胡散臭そう
こういった思いに答えるために、次のことを深掘りして解説していきます。
【この記事で学べること】
- ポジティブ心理学とは?
- ネガティブな人こそポジティブ心理学を学ぶべき理由
- 幸せを説明するPERMAモデルとは
心理学の予備知識がない方でもわかりやすいよう解説していくのでぜひ皆さんもポジティブ心理学を学んでいきましょう!
本ブログの内容は、科学的に分析された心理学論文の情報に基づいています。
それでは、さっそくポジティブ心理学について学んでいきましょう!
ポジティブ心理学とは
ポジティブ心理学とは、1998年にアメリカ心理学会の会長であるマーティン・セリグマン博士によって提唱された心理学です。
ポジティブ心理学はこれまで疾患などネガティブな心理的要因にライトが当てられていた従来の心理学と異なり、個人の強みや幸せなど人間のポジティブな面に注目していることが大きな特徴です。
ポジティブ心理学の目的
ポジティブ心理学の目的は「幸せ」になるためにはどのようにしたらよいのかと追及することにあります。
心理学的には、この「幸せ」のことをwell-being(ウェルビーイング)と呼ばれています。
下記の記事では、心理学的な幸せとは何なのかについて詳しく解説しています。
ポジティブ心理学の意義
「ポジティブ心理学は幸福な状態を追求する学問です!」と聞いたらこんなことが思い浮かぶかもしれませんね。
これまでは、精神疾患にはどのような症状があり、原因が何であるかを追求することにより、精神疾患の治療はどのように行えばよいのかというマイナスから0に近づける方法を模索していました。
これに対し、ポジティブ心理学では健康な人であっても、より人生に満足し、いきいきと過ごすための方法を模索することによって精神疾患に陥らないよう予防する観点も含んだ学問であるという点で大きな違いがあるでしょう。
ポジティブ心理学では、この予防的観点からレジリエンスという概念に注目しています。
下記の記事では、「レジリエンスとは何か」というイロハのイから、どのようにして高めていけるのかを詳しく解説しています。
ネガティブな人こそポジティブ心理学を学ぶべき理由
また、ポジティブ心理学に懐疑的な方にはこのような思いがあるかもしれません。
ネガティブな人でも全く問題ありません。
むしろ、ネガティブな人でもポジティブ心理学を学ぶことが出来る、むしろネガティブな人ほど学ぶべきであると言えます。
その理由は次の2つです。
- ポジティブ心理学者の提唱者はネガティブだから
- 幸せを作る要素はこれから伸ばすことが出来るから
ポジティブ心理学の提唱者がネガティブだから
ポジティブ心理学に懐疑的な方にはこんな思いがあるかもしれませんね。
以外かもしれませんが、ポジティブ心理学を提唱したセリグマンはネガティブな人物であったことが知られています。
彼はもともと、「学習性無力感」の理論提唱など、うつ病やうつ状態のメカニズムに注目していた研究者でした。
自分ではどうしようもできない環境で不快な刺激に曝され続けることにより、「自分は無力である」ことを学習し、何事にも諦めてしまうようになる現象のこと。
抑うつ、不安、怒りなどは遺伝的なパーソナリティ特性に由来しており、何とか緩和することが出来るくらいで、完全に根絶することが出来ない。私自身、破滅的で自動思考に対抗するためにありとあらゆる治療的な技法を知っているにもかかわらず、生まれつきのペシミストとして、頻繁に「私は失敗者だ」「人生は生きるに値しない」といった声を聞いてしまうのだ。私はこうした声に反論することでそのボリュームを幾分下げることは出来るのだが、そうした声は常に存在し続け、背後に潜み、いつでもぶり返しそうになっている。
これはセリグマン自身のコメントですが、セリグマンがいかに自身のネガティブさに苦しんでいたのかは想像に難くありません。
そして、あえて自身とは真逆のポジティブで幸せに囲まれた人生を送る人間に変わるためにはどうすればよいのかが彼の主要な研究テーマとなっていき、ポジティブ心理学の提唱へと至ったのです。
ポジティブな人というのは、楽観的な人とも言えます。
ポジティブ心理学では、そのような楽観的な人の持つ「楽観性」を中核概念として重要視しているのです。
幸せを作る要素はこれから伸ばすことが出来るから
心理学では、個人の性格傾向を考えるうえで「氏か育ちか」というテーマが長らく議論されてきました。
結論から言うと、性格特徴は遺伝と環境どちらからも影響を受け形成されるものであるということが分かっています。
セリグマンの提唱した学習性無力感から、環境からの影響によりネガティブな性格を形成するということが分かっています。
ネガティブな性格が後から形成されるのであれば、裏を返すとポジティブな性格も適切な取り組みによって形成することが出来ると言えるでしょう。
そのため、ネガティブな自分を変え、幸せに近づくためにもポジティブ心理学を学ぶべきなのです。
幸せを説明するPERMAモデルとは
ポジティブ心理学のゴールともなる幸せは次の5つの要素から成り立っているとされます。
【幸せのための5つの条件】
- Positive Emotion(ポジティブ感情)
- Engagement(エンゲージメント)
- Relationships(人間関係)
- Meaning(意味・意義)
- Achievement(達成)
そうではありません。
人気の芸能人の自殺がニュースで取り上げられることなどが良い例で、たとえお金や地位があってもそれは幸せな状態であることとは無関係なのです。
ある研究では、財と幸福感の研究を行い、財の種類によって幸福感の持続性が異なることが分かってきたのです。
【財の種類】
- 地位財:周囲の比較により満足が得られるもの
- 非地位財:他人との比較無しに幸せが得られるもの
幸福の持続性 | 高い | 非地位財 | 健康・社会への帰属意識・自由・愛情など |
低い | 地位財 | 所得・社会的地位・物的財 |
年収が高い、ブランドものを持っている、良い会社に入っているなどの地位財は生存に関わる重要な要素であり、確かに一時的には幸せを感じることが出来ますが、その幸せは長続きしないのです。
ポジティブ感情
ポジティブ感情を多く経験することのできる人生は幸福であり、よりよい人生を送ることが出来るということが一般論ではなく、科学的に証明されています。
ポジティブ感情の代表例は次のようなものが挙げられます。
【ポジティブ感情の代表例】
- 嬉しい!
- 楽しい!
- 感動した!
- 可愛い!
- 頑張ろう!
真の幸せを得るためにはポジティブ感情をたくさん経験できる生活を送れるようにしましょう。
エンゲージメント
エンゲージメントは、活動に没頭する状態を指します。
一生懸命何かに取り組み、他のことを忘れるほど集中している状態は、その瞬間に完全に浸っています。
この状態はフローとも呼ばれ、ポジティブ心理学の重要概念の1つとして注目を集めており、時間を忘れるほど集中していた時間は充実感が高く、短時間ながらも個人の幸福度に大きく関与するとされています。
確かにその時間は幸せだったなと感じられるかも!
下記の記事では、フローとは何か、どのようにすればフローを体験できるのかについて詳しく解説しています。
人間関係
周りの人々と深く信頼できる人間関係の構築は幸せに大きな影響を与えます。
誰とも関わらない孤独な生活や、そりの合わない人に囲まれて暮らすことが不幸せなことは想像に難くありませんが、良好な人間関係は不幸に陥らないことではなく、より幸せを追求することに繋がるのです。
良好な人間関係下では、コミュニケーションを楽しむことだけではなく、援助や協力などポジティブな行動も生じやすくなります。
ポジティブ心理学では、良好な人間関係を築くための魔法の言葉として感謝がもたらす効能について研究を行っています。
詳しくは下記の記事をご覧ください。
意味・意義
Meaningは、人生の意味や意義を指しています。
人生に何らかの意義を見出していることは、困難に対しての立ち直りが早いことが指摘されています。
このように人生をかけて取り組みたい夢や目標を持ち、人生を意義あるものにすることは幸福に繋がるのです。
人生の意義や価値などは「生きがい」とも言い換えられますね。
達成
何かを成し遂げた感覚も幸せの重要な要素です。
達成感というものは、個人にとって満足感があるだけでなく、他の課題に対する自信にもつながるものです。
達成感をより多く経験できる人生は、個人に満足感をもたらすとともに、自信をつけ様々な課題にチャレンジする積極性も促進するため、幸福に近づくポジティブなサイクルを形成するきっかけとなるのです。
より良い達成のためにはどのような目標を掲げるのが良いのでしょうか。
次の記事で詳しく解説しています。
まとめ:人生をより良いものにするためにポジティブ心理学を学びましょう
ポジティブ心理学の全体像を掴んでいただけましたか?
今回ご紹介した様々な概念は別記事で詳しくご紹介していますので、ぜひ気になる記事を読んでみてください。
【参考文献】
- 宇野カオリ(2019)『ポジティブ心理学の挑戦 (特集 研究対象の変化と新しい分析アプローチ) — (心理学)』日本労働研究雑誌 61 (4), 51-58
- 前野隆司(2017)『ポジティブサイコロジーと日本人の幸せ』公共研究 13 (1), 78-85
- 前野隆司(2017)『実践 ポジティブ心理学 幸せのサイエンス』PHP研究所