こんにちは、Nameck(なめっく)です。
今日のテーマはストレス耐性についてです。
ポジティブ心理学では、精神的健康の予防・向上というメンタルヘルスの領域の研究も行われており、中でもストレス耐性を意味するレジリエンスに大きな注目が集まっています。
・ストレス耐性って我慢強さと何が違うの?
・レジリエンスって高められるの?
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こういった思いに答えるために、次のことを深掘りして解説していきます。
【この記事で学べること】
- レジリエンスとは?
- ストレス耐性の種類
- レジリエンスを高める4つの方法
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本ブログの内容は、科学的に分析された心理学論文の情報に基づいています。
それでは、さっそくポジティブ心理学について学んでいきましょう!
レジリエンスとは
レジリエンスとはストレス耐性の1つであり、次のような定義が代表的です。
【レジリエンスの定義】
困難で脅威的な状態にさらされることで一時的に心理的不健康の状態に陥っても、それを乗り越え、精神的病理を示さず、よく適応している状態(小塩・中谷・金子・長峰,2002)
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それでは、それぞれの立場を詳細にみていきましょう。
性格として捉える立場
私たちに怒りっぽい性格・怖がりな性格があるように、この立場では、レジリエンスを性格の1つとして考えます。
代表的な定義は次の通りです。
ストレスフルな状況でも精神的健康を維持する、あるいは回復へと導く心理的特性(石毛・武藤,2005)
そのため、レジリエンスを性格として捉えると、ストレスなど逆境下においても、そのストレスに圧倒されなかったり、落ち込んでしまっても立ち直りやすい性格であると言えます。
逆に、暗かったり、真面目過ぎる人は、困難があると心がポキっと折れちゃってストレスに弱いかもしれないわ…
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そして、最近の研究では、このレジリエンスという性格を構成する要素は「生まれながらに決められているもの」と「生まれた後に獲得されるもの」に分類できることが分かりました。
レジリエンス要因 | 気質的要因 | 楽観性 | 物事を前向きに捉え、成功を思い浮かべやすい |
統御力 | 自分の欲求や感情を上手くコントロールする能力 | ||
社交性 | 人間関係を広げたり、親しくなる能力 | ||
行動力 | 粘り強く取り組み、最後まで物事をやり通す力 | ||
獲得的要因 | 問題解決志向 | トラブルの原因を考え、解決しようとする | |
自己理解 | 自分の性格や考えに対する理解 | ||
他者心理理解 | 人の気持ちや考えを理解し、思いやりを持って接する |
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私たちは、遺伝的な要因の影響を少なからず受けています。
例えば、身長を伸ばしたいと思って、いくら牛乳を飲んで、しっかり睡眠時間を取ったとしても、誰でも2mになるわけではありません。
これは、遺伝的な要因によって生まれながらにある程度、どの程度身長が伸びるのかが決められているからです。
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この獲得的要因の発見から、レジリエンスはこれからでも伸ばすことが出来ることが分かったのです!
心理的過程や結果として捉える立場
ストレス場面でレジリエンスを性格傾向として捉えることは個人差を説明するうえで非常に有用ですが、それだけでは実際にストレスに曝された際に「レジリエンスの高い性格だから」という結論しか得られません。
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このような観点から、レジリエンスを「プロセス、もしくは結果」として捉え研究を行う必要もあるわけです。
この立場では、レジリエンスを次のように定義します。
逆境、トラウマ、惨事や脅威、もしくは大きなストレスにさらされても上手く適応していく過程(American Psychological Association,2018)
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例えば、虐待や両親の離婚、貧困などのストレス負荷の高い状態でも適応を保っている人は現実に存在します。
そして、その人の置かれている状況、その人自身にはどのような特徴があるのかを詳細に分析していくわけです。
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- 危険因子:心身の発達に悪影響を及ぼすストレスフルなイベント
- 脆弱性因子:危険因子の悪影響をさらに強める要因
- 保護因子:危険因子の効果を緩和する要因
先述の性格としてのレジリエンスの高さ(前向き、社交的な性格をしているなど)はこの保護因子の1つに過ぎません。
そのため、危険因子を詳細に調べ、どのようなイベントが特に注意すべきなのかを特定したり、保護因子を詳細に調べることでストレス下でも適応できるよう能力を育て、環境を整えることで予防的介入が可能となるのです。
プロセスとしての立場は、ストレス下にあっても適応している人の置かれている状況をより広く研究することで、どのようにすればストレス下でも適応できるのかを探るのね!
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ストレス耐性の種類
レジリエンスはストレスに負けず、たとえ落ち込んだとしても回復していくことのできる心理的な力です。
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ハーディネスとは
ハーディネスとは、高ストレス下においても健康を保っていられる人々の持つ性格特性です。
ハーディネスもレジリエンスと同じくストレス耐性を表す要因の1つであり、次の3つの要因から構成されます。
ハーディネス | チャレンジ | ストレス下でも成長の途を見つけようと努力する |
コントロール | 出来事を変えられると信じ、行動し続ける | |
コミットメント | ストレスフルな状況でも周囲の人や出来事と関わろうとする |
ハーディネスとレジリエンスの違い
それでは、レジリエンスとハーディネスはどのような点で異なるのでしょうか。
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プラスチックのボールは表面が固く、多少の衝撃で傷ついたり、壊れてしまったりしません。
しかし、ハンマーで叩くなど大きな衝撃が加わると、ひしゃげてしまい、元の形に戻ることはありません。
これに対し、ゴムボールは少しの力でも凹みますが、大きな力が加わってもその柔軟性から元の形に戻ることが出来ます。
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ハーディネスは高ストレス下でも耐えられる心理的な力、つまり耐久力に近い概念です。
そのため、ハーディネスの高い人は、ストレスを感じにくく、ある程度の負荷まではストレスに耐えやすいのです。
しかし、プラスチックのボールのように強いストレスがかかると体調を崩してしまうでしょう。
このように、ハーディネスはストレスに負けないまでの上限が高いだけに過ぎません。
これに対し、レジリエンスには、回復力という要素が含まれています。
そのため、ストレスに曝され、ゴムボールのように一度は凹んだとしても、その柔軟性から元の状態に回復する力を有しているのです。
同じストレス耐性、心の強さを表す要因でも、レジリエンスは回復力を備えている弾力ある心の程度を表す概念なのね!
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このように考えると、ハーディネスの高さよりもレジリエンスの高さのほうが望ましいと言えるでしょう。
レジリエンスを高める4つの方法
結論からお伝えすると、レジリエンスは今からでも高めることが出来ます。
ポジティブ心理学ではレジリエンスを高める方法として次の4つの方法を掲げています。
【レジリエンスを高める4つの方法】
- I can(私は○○できる)
- I have(私には友人・知人がいる)
- I like(私は○○が好きだ)
- I am(私は○○である)
しかし、この方法を使えば、どのような人でも高めることが出来るのでしょうか?
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このような落ち込みやすい「心理的敏感さ」という心理的特徴はレジリエンスのプロセスにおける脆弱性要因ですが、平野(2012)はHSPのような傷つきやすい人でも獲得的レジリエンスを高めていけるということが分かっています。
つまり、ストレスに弱い人であってもこれからレジリエンスを高めていくことが出来るのです。
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I can(私は○○できる)
「自分は○○できる」という自信を身に着けることは逆境でも適応するための力に繋がります。
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そして、その困難な状況を「どのようにして乗り越えたのか」、「その時の体験からどのようなことを学んだのか」を紙に書きだしていきましょう。
どんな人でも、これまでの人生で困難だった状況を乗り越えていない人はいません。
他人と比べて「こんなものは大した困難ではない」と決めつけず、自分が乗り越えたことをどんどん書き出してみましょう。
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I have(私には友人・知人がいる)
友人や知人の存在は、ストレス下でも大きな心のささえとなります。
そのため、自分の友人や知人、支えてくれる人、過去に助けてもらった人を思い浮かべ、どんどん紙に書き出してみましょう!
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視覚的に、人とのつながりを確認することは、安心感を持ってストレスに向き合ううえで非常に大切です。
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I like(私は○○が好きだ)
ストレスを感じてしまうとつい視野が狭まり、自分はダメだなととネガティブな面に目が行きがちです。
そんな時こそ、楽しかった思い出や自分の大切な人の写真を見てみましょう。
その時の思いに浸ることが出来れば、それだけでワクワクとして楽しんでいる自分を感じることが出来ます。
これは現実逃避ではなく、ストレスから自分を守り、精神的回復をするという意味があるのね!
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I am(私は○○である)
最後の「私は〇〇である」というI amは自分の得意なこと、強みを考えてみるというものです。
自分の得意・強みが思い浮かばなければ、信頼できる周りの人に尋ねてみることも良いでしょう。
自分の強みに改めて気づくことは自分らしさを再確認することになるのです。
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まとめ:傷つかないことよりもストレスに対して柔軟に対応することが大切
今回は、ポジティブ心理学の重要概念レジリエンスを取り上げました。
記事のポイントをまとめます。
- レジリエンスとは、ストレスに耐え、精神的に回復する状態
- 傷つきにくさであるハーディネスよりも心の弾力を表すレジリエンスのほうが望ましい
- レジリエンスは4つの方法で後からでも高めることが出来る
【参考文献】
- 中西友希子・玉瀬耕治(2014)『ストレス状況下におけるレジリエンスとハーディネスの役割』帝塚山大学心理学部紀要 3 31-41
- 平野真理(2010)『レジリエンスの資質的要因・獲得的要因の分類の試み』パーソナリティ研究 19 (2), 94-106
- 荒木剛(2005)『いじめ被害体験者の青年期後期におけるリズィリエンス(resilience)に寄与する要因について』パーソナリティ研究 14 (1), 54-68
- 平野真理(2012)『心理的敏感さに対するレジリエンスの緩衝効果の検討』教育心理学研究 60 (4), 343-354