こんにちは、Nameck(なめっく)です。
今回は不登校の子どもの気持ちを掘り下げます。
未だに不登校に対しては「学校をサボっている」というイメージを持つ方もいらっしゃいます。
しかし、学校に行かず家に居る子どもは何のストレスもなく、好きなように過ごしているのでしょうか?
・不登校の時にストレスは感じていないの?
・不登校から立ち直るためにはどうすればいいの?
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こういった思いに答えるために、次のポイントを解説していきます。
【この記事で学べること】
- 不登校状態の子どもが抱えている気持ちとは
- 不登校の時に子どもが感じているストレスとは
- 不登校から立ち直るためのレジリエンスとは
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本ブログの内容は、科学的に分析された心理学論文の情報に基づいています。
それでは、不登校状態とストレスの関係について学んでいきましょう!
不登校状態の子どもが抱えている気持ちとは
不登校状態の子どもは、安心と不安という対極の気持ちに振り回され苦しんでいます。
未だに、学校でやりたくないことから解放され、怠けているためストレスとは無縁だと考える人もいるかもしれません。
確かに、不登校状態にあった子どもに対しインタビュー調査を行った宮良ら(2022)によれば、不登校状態にある子どもは安心感のようなポジティブな思いを抱いていることが報告されています。
【ポジティブな思い】
- 居心地の良さ
- 否定されない自分
- 自由な時間がある
- 家族の中で役割がある
しかし、それと同時に「今のままではいけない」と自分の現状や将来に焦りや不安を感じているのです。
不登校児が抱える代表的なネガティブな思いは次の通りです。
【ネガティブな思い】
- 退屈
- 将来への焦り
- 不登校のままでいる不安
- 親への負い目
- 同世代からの孤立感
このように、相対する気持ちが同時に存在する状態は大きなストレスとなります。
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葛藤とはレヴィンという学者によって提唱された「同じくらいの強さの欲求が存在するためにどちらも選択できず悩み続ける状態」のことを指します。
より詳細に解説すると、この不登校児が抱える葛藤は「接近=回避の葛藤」と呼ばれます。
接近=回避の葛藤は1つの対象に対して、近づきたい気持ちと避けたい気持ちが同時に存在している状況です。
例えば、
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確かに、不登校児は家に居ることで安心でき、居心地の良さを感じています。
しかし、その一方で「学校に行かないという状況を脱しなければいけないのではないか」とも考えているのです。
このような、葛藤状態が長引くと欲求不満状態、つまりフラストレーションを感じるようになります。
このフラストレーションは明らかに不登校児にとって大きなストレスになっているのです。
不登校のときに子どもが感じているストレスとは
日常生活で私たちはストレスという言葉を使っていますが、心理学でのストレスはどのような意味を持っているのかご存じでしょうか?
まずは、いまさら聞けない心理学的なストレスのメカニズムを解説します。
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心理学的なストレス理論とは
もともと、ストレスという言葉は「物体に圧力を加えることによってできる歪み」を意味する物理学の用語でした。
これを1936年にハンス・セリエという学者が、外界からの刺激に対する反応をストレスと呼んだことによって、心理学でもストレスという用語が用いられるようになったのです。
私たちは日常的にストレスという言葉を耳にしますが、たいていの場合は次のような用いられ方をしているでしょう。
・会社の上司に怒られたからストレスが溜まる…
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この時の「ストレス」は自分にとって不快な出来事を指してます。
しかし、正確にはそのような不快な出来事は「ストレッサー」と呼ばれます。
そして、ストレッサーに曝されることで生体には何らかの反応が引き起こされます。
このようなストレッサーによって引き起こされる反応がストレス反応です。
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不登校状態で生じやすいストレス反応とは
前項で解説した不登校児のこころに生じる「葛藤」はストレス理論でのストレッサーにあたります。
それでは、不登校状態で生じやすいストレス反応とはいったいどのようなものがあるのでしょうか。
実際に不登校経験者に対して当時のストレス反応を調査した齋藤ら(2005)によれば、次のようなストレス反応が高かったことが明らかとなっています。
【不登校児に生じるストレス反応】
- 身体症状(眠れない・疲れやすいなど)
- 抑うつ・不安(気分が落ち込む、何となく心配だなど)
- 不機嫌・怒り(いらいらしてしまう、感情を抑えられないなど)
- 無力感(良くないことを考えてしまう、何かに集中できないなど)
このようにストレス反応は心理面、行動面、生理面と幅広く生じます。
そのため、不登校児は多くの症状に悩まされている状況だと考えるべきでしょう。
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ストレス反応を左右する個人差
しかし、ストレッサーに曝されたとしても、必ずストレス反応が生じるとは限りません。
ストレス反応の生じやすさ、つまりストレスへの強さには個人差があるのです。
例えば、先生に怒られたという状況において、次のような捉え方に違いがあったらどうでしょうか。
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前者では、大きな落ち込みなどのストレス反応が生じそうですね。
これに対し、後者では特にストレス反応が生じるとは考えにくいでしょう。
今回は、ストレッサーの捉え方の違いに注目しましたが、このような個人の持つ心理的な要因の違いによってストレスへの強さには個人差が生じるのです。
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不登校から立ち直るためのレジリエンスとは
レジリエンスとは、ストレスフルな状態にさらされても、それを乗り越えよく適応している状態を指す概念です。
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個人の中にどれほどレジリエンスが備わっているのかは、ストレスへの強さ、ひいては不登校からの立ち直りを考えるうえで非常に重要です。
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最近の研究では、レジリエンスは大きく次の2つに分けられることが分かっています。
【レジリエンスの2要因】
- 資質的レジリエンス
- 獲得的レジリエンス
資質的レジリエンスとは
資質的レジリエンスとは、生まれながらにして個人に備わっているストレスへの強さで、次のような心理的要因です。
そもそも、心理学では生まれながらにして持っている素質は遺伝的影響が強く、一生を通じて変わりにくいと考えます。
例えば、身長を例に挙げてみましょう。
確かに身長を伸ばすためには牛乳を飲む、よく寝るなどの方法が知られています。
しかし、たくさん牛乳を飲んで、よく睡眠をとっても必ず全員が2mの新調になるとは限りません。
それは生まれながらにして身長がどれほど伸びるのかについては遺伝によって決められているからです。
資質的レジリエンスも、このように遺伝的影響を受ける生まれながらの素質であると考えられています。
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【資質的レジリエンスの4つの要因】
- 楽観性
- 統御力
- 行動力
- 社交性
楽観性
楽観性は将来に対して肯定的な期待を保持する傾向のことを指します。
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この楽観性は、何らかの困難があったとしても希望を失いにくいという特徴があります。
そのため、トラブルに見舞われても将来に対して絶望せず努力し続けるため、ストレスフルな状況を乗り越えるストレス耐性なのです。
統御力・行動力
統御力・行動力は自分の感情や行動を自分の意志でコントロールする力です。
この力は粘り強さや真面目さとも言えるでしょう。
私たちは多少体調が悪かったり、ネガティブな気分に陥っても学校に通ったり、仕事に行っています。
これは、自信の感情に流されず、自分のやらなければいけない行動を行うよう意思の力でコントロールしているからです。
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一時の感情に流されず、忍耐力をもって目標に向かって努力できる力は問題の解決のために必要な力のため、ストレスに強いのです。
社交性
社交性は他者と関わることを好み、コミュニケーションが得意な傾向を指します。
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社交性の高い人はコミュニケーションを取る場面で不安や緊張が生じにくいという特徴があります。
その理由は、他者に対する基本的な信頼感や安心感を有しているためであると考えられています。
社交性が高いことは円滑なコミュニケーションを導くため、困ったときにも周囲のサポートを得やすいという特徴があります。
そのため、ストレスフルな事態においても他者からの適切な手助けによって無理なく問題を解決するため、ストレスに強いと考えられるのです。
獲得的レジリエンスとは
これに対し、獲得的レジリエンスとは生まれた後に学びや経験を通じて獲得されるレジリエンスのことを指します。
資質的レジリエンスは生まれながらにして持っている能力で生まれた後の変化は少ないと考えられています。
しかし、がっかりすることはありません。
なぜなら、今からでも育て、伸ばすことのできる「獲得的レジリエンス」は私たちにも備わっているからです。
そのため、現在レジリエンスが低かったとしても適切な介入で伸ばしていくことが出来るでしょう。
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獲得的レジリエンスは次の3つの要因によって構成されています。
【獲得的レジリエンスの3つの要因】
- 問題解決志向
- 自己理解
- 他者心理の理解
問題解決志向
問題解決志向とは問題を積極的に解決しようとしたり、そのために必要なスキルを学ぼうとする姿勢のことを指します。
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確かに、ストレスとなっている出来事の解決に取り組もうとしたら余計にストレスを感じそうですよね。
しかし、この問題解決志向には自分の意志によってどのような行動をとるのかを決定することによって満足感が高まるという性格と深いかかわりがあることが分かっています。
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このような背景から、状況を改善するために積極的に解決しようという意思を持ち、解決方法を学ぼうとする問題解決志向が高い人はストレスフルな出来事に強いと言えるのです。
自己理解・他者心理の理解
自己理解とは自分の考えや自分に自信について理解・把握し、自分の特性に合った目標設定が出来る力のことを指します。
そして、他者心理の理解は相手の心を理解もしくは受容する力のことです。
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まず、他者のこころを理解することが出来れば、人間関係のトラブルが減るでしょう。
そして、自分自身について深く知るということは、自分が心から望んでいることや、長所・短所について理解できている状態です。
そのため、自分を過度に犠牲にしたり、無理な目標設定をすることが減ります。
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なぜなら、様々な人の価値観に触れる中で、自分の大切にしているものが分かるように、自己理解は他者とのかかわりの中で育まれます。
また、他者理解は、「自分が相手だったらどう考えるだろう?」のように、相手への同一視を通じて行われます。
したがって、自己理解と他者心理の理解は、お互いに影響を与え合うものであると考えられているのです。
そのため、自己理解・他者心理の理解が進んでいる状況とは、自分と他者の違いを受け入れ、そのどちらも大切にする現実的な対人関係を築くことでストレスフルな状況の解決をする力なのです。
レジリエンスを高めるための方法
それでは、獲得的レジリエンスを高めるためにはどのようにすれば良いのでしょうか。
レジリエンスを高めるためには次の2つの経験が大切になると言われています。
- 社会的能力を高める機会
- 困難を克服する経験
社会的能力を高める機会
藤原(2018)の研究では、社会的能力を鍛えるプログラムを通じて、レジリエンス向上や不登校傾向の減少につながったと報告しています。
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不登校のような欠席率の高い児童は次のような特徴がみられるとされています。
- 自分の想いや考えを他者と共有することが苦手
- 自分に関することへ気づきにくい
このような特徴は獲得的レジリエンスの自己理解及び他者心理の理解が欠けている状況であると考えられます。
社会的スキルは、自分の内面に目を向けたり、自分の想いを他者に適切に伝えるようなスキルを指します。
このようなスキルは、獲得的レジリエンスの自己理解や他者心理の理解を育むものであると考えられます。
そのため、レジリエンス向上のためには社会的スキルを育む環境に身を置くことが大切になるでしょう。
困難を克服する経験
困難経験はストレス反応を導くものの、ある程度の負荷はストレス耐性を高めることになります。
ある程度の負荷(ストレス)がかかる困難経験を乗り越えることで、心理的な成長が生じることは心理学研究で実証されているのです。
これを「ストレス関連成長」と呼びます。
ストレス体験を乗り越えると、次のような成長が見られます。
- 自信がついた
- 自分の弱い面を他者に見せても良いことを学んだ
- 必要以上に心配しなくてよくなった
このように、ストレス経験を乗り越えることで必要以上に心配しなくなり、自信をもって取り組む姿勢が育まれます。
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そのため、レジリエンスを高めるためには、ある程度の困難を経験することも大切となってくるのです。
まとめ:辛い不登校状態を抜け出すためにレジリエンスを高めよう
今回は不登校状態の子どもの気持ちやストレスとの向き合い方について解説しました。
記事のポイントをまとめます。
- 不登校状態の子どもは安心と不安の間で揺れ動く葛藤に苦しんでいる
- 不登校状態では、多くのストレス反応が生じてしまう
- ストレス耐性を高めるために、獲得的レジリエンスの向上を目指すべき
【参考文献】
- 宮良淳子・柴裕子・市江和子(2022)『不登校からフリースクールを経て再登校を決めた経験者の心理的プロセス』日本看護研究学会雑誌 45 (2), 2_327-2_338
- 齋藤香織・松岡恵子・黒沢幸子・森俊夫・栗田広(2005)『不登校生のメンタルヘルス―通信制サポート校に在籍する不登校経験者への調査から―』こころの健康 20 (1), 36-44
- 平野真理(2010)『レジリエンスの資質的要因・獲得的要因の分類の試み』パーソナリティ研究 19 (2), 94-106
- 藤原佑一(2018)『不登校予防のための児童のレジリエンス向上 - SEL-8S による社会的能力の向上を通して -』福岡教育大学大学院教育学研究科教職実践専攻(教職大学院)年報 8 89-96