こんにちは、Nameck(なめっく)です。
今回のテーマは不登校の子どもとの接し方についてです。
様々なブログや書籍で「お子さんを褒めましょう」と書かれていますが、その理由をご存じですか?
それは、褒められる経験が不登校から立ち直るために重要な役割を果たす「自尊感情」を高めるためです。
それでは、お子さんをどのように褒めたらいいのでしょうか。
・褒められるとどうして自尊感情が高まるの?
・自尊感情を高めるためにはどのように褒めれば良いの?
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こういった思いに答えるために、次のポイントを解説していきます。
【この記事で学べること】
- 不登校と自尊感情の関連とは
- 不登校の子どもの自尊感情を高める関わり方とは
- 自尊感情を高め、不登校から立ち直るための褒め方とは
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本ブログの内容は、科学的に分析された心理学論文の情報に基づいています。
それでは、さっそく不登校の子どもとの接し方について学んでいきましょう!
不登校と自尊感情の関連とは
古くから心理学研究では不登校と自尊感情の間には深い関連があることが指摘されてきました。
実際に心理学研究でも、不登校に陥っている子どもは自尊感情が低いということが示されているのです。
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それでは、不登校から立ち直るために重要とされる自尊感情とはいったいどのようなものなのでしょうか。
自尊感情とは
自尊感情とは自己に対する肯定的あるいは否定的な態度のことを指します。
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端的に自尊感情を解説すると、「自分の良い面も悪い面も含めて、これでよい」と受け入れる感情です。
そもそも、自尊感情は自己に対して評価を行ったときに生じる感情のことです。
それじゃあ、ナルシストが自尊感情が高い状態なの?
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確かにそのように考えると、自尊感情=ナルシストのようになってしまいますね。
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- 随伴性自尊感情:優越感のように何かしらの基準達成によって自分に価値があると感じられること
- 本当の自尊感情:ただ自分らしくあることによって自然と自分には存在する価値があると感じられること
随伴性の自尊感情は容姿が優れていると褒められたり、テストで高得点を取ることで自分には価値があると感じられるものです。
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しかし、常に他者との競争で勝ち続けられるでしょうか。
常に成功を収めるためには慢性的な労力とそれに付随する心理的な負担がかかってしまいます。
もし、失敗によって基準まで達しないことがあれば、それは単なる失敗では済まされず、自己評価の低下にまでつながってしまいます。
このことから随伴的自尊感情による自己評価は抑うつに繋がりやすいと指摘されているのです。
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そのため…
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と自分のありのままを受け入れることで得られる感情が心理学において望ましいと考えられている真の自尊感情なのです。
自尊感情と不登校の関連
自尊感情は精神的健康や適応の基盤を成すものとして心理学では古くから重視されてきました。
実際に多くの心理学研究では、自尊感情が高いとストレス反応のような精神的不健康さが低いという結果が示されています。
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そのため、自尊感情が低くなってしまうと、様々な問題が生じてきます。
その一つが不登校傾向の高さとの関連です。
粕谷・河村(2004)では、登校している子どもと不登校の子どもの自尊感情を比較しています。
その結果、統計的に有意に不登校児は自尊感情が低いことが示されたのです。
それでは、なぜ自尊感情が低さが不登校へと繋がるのでしょうか。
【自尊感情の低さが不登校へと繋がる理由】
-
- 自尊感情の低さが相談行動を阻害する
- 悩み・問題を一人で抱え込む
- 問題が解決せず、ストレスが溜まる
- ストレスとなる学校に行きたくなくなる
自尊感情は自分の良い面を評価し、受け入れた際に生じる感情です。
そのため、それ自身も幸福感や満足感に繋がるポジティブな性質を持っています。
それに加え、真の自尊感情は自分の悪い面も受け入れていることで生じるものです。
そのため、自尊感情が低いことは、自分の悪い面や弱い面を認められていないことを表します。
そのため、自分の弱い姿を他者に曝すことになる「相談」は少なくなるでしょう。
これによって、問題を一人で抱え込んでしまいますが、それが一人では解決困難なものであった場合、強いストレスがかかります。
その結果、ストレスを感じている「学校」へ行きたくないと不登校に陥ってしまうのです。
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子どもの自尊感情の実態
国際比較の研究からも、特に日本の子どもは自尊感情が低いことが問題視されてきました。
「私は価値のある人間だと思う」という問いに「全くそうだ」「まあそうだ」と考えている子どもの割合は…
- 日本:36.1%
- 米国:89.1%
- 中国:87.7%
- 韓国:75.1%
このような自尊感情の低さは、いじめや不登校、非行など様々な不適応に通じていると指摘されているのです。
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それでは、自尊感情を高めるためにはどのような接し方をしたほうが良いのでしょうか。
不登校の子どもの自尊感情を高める接し方とは
不登校状態の子どもの自尊感情を高めるためには「適切に」褒めることが大切です。
実際に多くの研究で、褒められる経験の多かった子どもは自尊感情が高いということが示されています。
北田・中地(2018)は両親から褒められた経験について研究を行い、褒められることの多かった子どもは自尊感情が高く、不登校傾向が低かったとしています。
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褒めることが自尊感情を高めるメカニズム
なぜ褒めることが自尊感情を高めることに繋がるのでしょうか。
自尊感情に影響を与える要因として、親子関係が重要であると言われています。
そもそも心理学的に望ましい自尊感情は「自分の良い面も悪い面も受け入れ、これでよい」と受け入れている状態です。
成功を褒めてもらうことで自分の長所に気づくことができます。
また、正直にしてしまった失敗を受け入れられる経験によって「自分の短所や苦手なこともあってもいいのだ」と学ぶことが出来るでしょう。
このような、親から愛情を受け、全面的に褒められ、受容された経験は、次第にこころの中に取り入れられていきます(これを内在化と呼びます)。
その積み重なりによって自尊感情は構成されているため、親が受容的態度で褒めることが自尊感情を高めるのです。
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自尊感情を高め、不登校から立ち直るための褒め方とは
自尊感情を高めるためには、他者への気遣いや性格・態度などを褒めるようにしましょう。
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そうではありません。
自尊感情を高めるために必要なのは条件付きの成功ではなく、無条件の受容です。
これによって子どもは愛情を感じ、自分自身も好きになることが出来ます。
実際に井上(2015)では、テストで高得点を取った、かけっこで一番になったなど一時的な能力、結果より子どもの他者への気遣いや性格・態度などを褒めたほうが自尊感情が高まるという結果が出ています。
そのため…
・あきらめないで頑張り屋さんなところが偉い!
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このように、子どもの性格であったり、他者との関わりに関するポジティブなことを褒めるようにしましょう。
褒めるうえでのNG行為
たくさん褒められるほど自尊感情は高まりますが、好ましくない褒め方をしてしまうと逆効果となってしまうため注意が必要です。
褒めるうえでのNG行為は次の通りです。
- 成功など結果だけを評価して褒める
- 他人と比較して褒める
成功など結果だけを評価して褒める
テストで良い点数を取った時、部活動で良い結果を残したときなどは子どもを褒める良いタイミングのように思えます。
確かに、結果だけを評価して褒めることでも子どもの自己評価は高まります。
しかし、そこで形成されるのは随伴性自尊感情であり、真の自尊感情は育まれません。
また、成功することで褒めてもらえると学んだ子どもは失敗を避けるようになってしまいます。
そのため、自分が出来ること、得意なことにしか取り組まず、新たな挑戦をしないようになってしまうでしょう。
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テストで良い点が取れた、部活動で良い結果が残せたことはもちろん喜ばしいことなので、その事実を共に喜びましょう。
そのうえで、子どもの取り組みや良い結果を残すまでのプロセスを褒めるように心がけることで真の自尊感情を高めることが出来るのです。
他人と比較して褒める
他人と比べて優れていると褒めることはしないようにしましょう。
これは、自尊感情を高めるために必要な子どもの性格・態度や他者への気遣いなどを褒めるときでも同様です。
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・○○ちゃんよりも優しいね!
・お兄ちゃんよりも頑張ったね!
このような他者との比較は、褒められた本人にも悪影響があります。
他者よりも良いという評価は「他の人よりも自分は優れている」という感覚をもたらしますが、これは他者を軽視する傾向を強めかねません。
そのため、自尊感情は低いものの、他者を軽視することで相対的に自己評価を維持しようとしかねません。
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このような他者を見下すことで自分が優れていると思い込むことを「仮想的有能感」と呼びます。
仮想的有能感は不登校傾向を強めるという研究結果も出ているため、他者と比較して褒めることは避けるようにしましょう。
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叱ることは良くないのか?
意外なことですが、叱られる頻度が高くても自尊感情の高さには影響を与えないということが研究で示されています。
むしろ、叱る際にはその頻度ではなく、内容に注目すべきです。
次のような内容で叱られた場合、子どもは自分が否定されたと感じ自尊感情が低くなってしまいます。
- 容姿
- 学業
- 性格
- 態度
しかし、このような内容で叱らざるを得ない状況もあると思います。
その時には子どものマイナスな行動のみを叱るようにしましょう。
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・出された宿題をきちんとしないことは良くないことだよ
・身だしなみが整っていないからきちんとしないとだめだよ
・先生にはきちんと挨拶をするようにしないとだめだよ
特に「頭が悪い」「性格が悪い」「醜い」など子どもの能力や継続的な特徴を叱ることは自尊感情に大きな悪影響があるため、言わないようにしましょう。
まとめ:子どもの自尊感情を育てる接し方が大切
今回は不登校と自尊感情の関係について解説しました。
記事のポイントをまとめます。
- 不登校から立ち直るためにも自尊感情を育むことが大切
- 自尊感情を高めるためには、子どもに受容的に接し、褒めましょう
- 褒めるときには子どもの性格・態度や他者への気遣いを取り上げましょう
【参考文献】
- 伊藤正哉・川崎直樹・小玉正博(2011)『自尊感情の3様態──自尊源の随伴性と充足感からの整理── 』心理学研究 81 (6), 560-568
- 財団法人日本青少年研究所(2009)『中学生・高校生の生活と意識―日本・アメリカ・中国・韓国の比較―』財団法人日本青少年研究所
- 北田千尋・中地展生(2018)『両親からの褒められ経験と自尊感情及び不登校傾向の関連』帝塚山大学心理科学論集 1 19-26
- 井上清子(2015)『両親・教師からの褒められ・叱られ経験と自尊感情の関連についてII』生活科学研究 40 95-102