こんにちは、Nameck(なめっく)です。
今日のテーマは悲観主義のメリットです。
「上手くいかないかも…」と考えることにはどのような良いことがあるのでしょうか?
心理学研究では、課題に取り組む際にあえて失敗してしまうイメージを頭に思い浮かべる「防衛的悲観主義」という認知的方略の機能に注目が集まっています。
・ネガティブな私の考え方にいいことなんてあるのかな?
・成功をイメージできないのに成功するの?
![サイ子さん](https://psycho-labo.com/wp-content/uploads/2022/09/11835_color-300x262.png)
こういった思いに答えるために、次のことを深掘りして解説していきます。
【この記事で学べること】
- 成功するネガティブな人はどんな人?
- ネガティブな考えが成功を導く理由
- 防衛的悲観主義者の特徴
![Nameck(なめっく)](https://psycho-labo.com/wp-content/uploads/2022/09/アイコン.png)
本ブログの内容は、科学的に分析された心理学論文の情報に基づいています。
それでは、さっそく悲観主義のメリットについて学んでいきましょう!
成功するネガティブな人はどんな人?
課題で高いパフォーマンスを示すネガティブな人のことを、防衛的悲観主義者と呼びます。
防衛的悲観主義は認知的方略と呼ばれる「課題に対する考え方、取り組み方」のことであり、次のように定義されます。
個人がある目標を追求するときの期待・評価・計画・努力・回顧の一貫したパターン
![サイ子さん](https://psycho-labo.com/wp-content/uploads/2022/09/11835_color-300x262.png)
![Nameck(なめっく)](https://psycho-labo.com/wp-content/uploads/2022/09/アイコン.png)
過去のパフォーマンスに対する認知 | |||
ポジティブ | ネガティブ | ||
将来のパフォーマンスに対する見込み | 高い | 方略的楽観主義 | 非現実的楽観主義 |
低い | 防衛的悲観主義 | 一般的悲観主義 |
- 方略的楽観主義:過去の高い成績と一致した課題のパフォーマンスを想定する
- 非現実的楽観主義:過去の課題に失敗していても、肯定的な未来を予想する
- 防衛的悲観主義:過去に成功しているにも関わらず否定的な結果を予想する
- 一般的悲観主義:過去の失敗から自信を失い、否定的な結果を予想する
この中でも、認知的方略研究で防衛的悲観主義という考え方をする人に対し、特に注目が集まっています。
![Nameck(なめっく)](https://psycho-labo.com/wp-content/uploads/2022/09/アイコン.png)
一般的に楽観主義の人は課題のパフォーマンス・健康度のいう観点から望ましいとされているため、ネガティブな考え方をする人の示す適応性に関する知見に注目が集まっているのです。
![Nameck(なめっく)](https://psycho-labo.com/wp-content/uploads/2022/09/アイコン.png)
ネガティブな考えが成功を導く理由
ネガティブな考えが成功につながるということは、これまで楽観性・悲観性を扱った研究結果とは相反するものです。
従来の悲観性とパフォーマンスの関係についての研究
一般的に、悲観主義者は自信が無く、課題のパフォーマンスも優れていないと考えられています。
課題に取り組む中で、何か問題が起こったりすると、失敗してしまうことが頭をよぎり、「どうせ頑張ったって失敗するんだから…」とあきらめてしやすいのです。
こういった理由から悲観主義者の課題のパフォーマンスは低くなりやすいと考えられています。
(テスト勉強中に)この問題難しいな…どうせ勉強したってテストでよい点数取れないし、勉強しても無駄だ…
![サイ子さん](https://psycho-labo.com/wp-content/uploads/2022/09/11835_color-300x262.png)
このように、否定的な結果を思い浮かべてしまうと、「どうせ頑張ったって失敗するんだから」とやる気が削がれ、課題への取り組みが減少してしまうためにパフォーマンスが低下してしまうと考えられているのです。
![Nameck(なめっく)](https://psycho-labo.com/wp-content/uploads/2022/09/アイコン.png)
熟考すること
防衛的悲観主義者は失敗をあえてイメージすることにより、不安を抱えやすいことが指摘されています。
しかし、その不安をコントロールすることによって、かえって今後起こりうる最悪の状況を想定し、その原因について熟考することで事前準備を怠りません。
その結果、課題のパフォーマンスが高まるとされているのです。
そういえば、社会のテストでは歴史の問題だけではなくて地理の問題も出るって言われてたな…
今から、教科書を見直そう!
あとは、参考書の応用問題もテスト範囲に含まれるかもしれないから確認して、授業で配られたプリントにも目を通しておかなくちゃ…
![サイ子さん](https://psycho-labo.com/wp-content/uploads/2022/09/11835_color-300x262.png)
![Nameck(なめっく)](https://psycho-labo.com/wp-content/uploads/2022/09/アイコン.png)
それでは、防衛的悲観主義者の「熟考」とは一体何を深く考えるのでしょうか。
この防衛的悲観主義者の熟考を対象とした外山(2014)の研究では、次のような熟考の機能を検討しています。
【熟考の種類】
- 計画に対する熟考:課題への取り組みをどのようにするかしっかりと計画する
- 成功に対する熟考:成功するという状況を熟考すること
- 失敗に対する熟考:失敗するという状況の予期や熟考すること
これらの熟考のうち、計画に対する熟考は適応的に作用することが研究で示されています。
防衛的悲観主義者は失敗してしまったらどうしようという不安が高まりやすいという特徴を逆手に取り、生じる問題への対応策に考えをめぐらすことによって高いパフォーマンスに繋がるのです。
![サイ子さん](https://psycho-labo.com/wp-content/uploads/2022/09/11822_color-300x267.png)
無意識的な自己評価は高い
自己評価と不安は密接な関係にあります。
![Nameck(なめっく)](https://psycho-labo.com/wp-content/uploads/2022/09/アイコン.png)
そして、自身の無さは、問題に対して積極に取り組もうという姿勢を引き出さず、問題から目を背け、逃げてしまう姿勢に繋がってしまいます。
実際に、質問紙調査で防衛的悲観主義者の自己評価を測定したところ、自己評価は低いとする報告が示されているのです。
![サイ子さん](https://psycho-labo.com/wp-content/uploads/2022/09/11835_color-300x262.png)
その理由は、無意識的な自己評価が高いことにあります。
多くの心理学研究で測定された質問紙による自己評価はあくまで意識的な自己評価であり、無意識的な自己評価は考慮されていません。
実際、清水・中島(2018)では、防衛的悲観主義者の意識レベルの自尊心は低いものの、無意識的な自尊心は高いという結果が示されています。
![サイ子さん](https://psycho-labo.com/wp-content/uploads/2022/09/11835_color-300x262.png)
![Nameck(なめっく)](https://psycho-labo.com/wp-content/uploads/2022/09/アイコン.png)
防衛的悲観主義者の特徴
それでは防衛的悲観主義者にはどのような特徴があるのでしょうか。
![Nameck(なめっく)](https://psycho-labo.com/wp-content/uploads/2022/09/アイコン.png)
- 人見知りがあり、相手に会話を合わせる
- 精神的健康度は標準的
- 無意識的な自己評価は高い
人見知りがあり、相手に会話を合わせる
家族や友人など気の知れた人とのコミュニケーションには問題ないものの、初対面の人と接するときに気疲れしてしまうことなどはありませんか?
防衛的悲観者は初対面の相手と会話をする際には高い不安を感じやすいことが研究で示されています。
![Nameck(なめっく)](https://psycho-labo.com/wp-content/uploads/2022/09/アイコン.png)
・どんな性格の人なんだろう…?
・どんな仕事をしている人なんだろう…?
・趣味など何に興味があるのかな…?
![サイ子さん](https://psycho-labo.com/wp-content/uploads/2022/09/11835_color-300x262.png)
前項で触れたように、防衛的悲観者は失敗を予期するため、しっかりと情報収集し、計画を立案する用心深い人物です。
そのため、相手と深い人間関係を構築していくために、相手の会話に合わせたり、自分の意見よりも相手の意見を尊重することで、情報を収集しようとするのです。
![Nameck(なめっく)](https://psycho-labo.com/wp-content/uploads/2022/09/アイコン.png)
このような理由から、防衛的悲観者の対人関係は良好であると考えられています。
精神的健康度は標準的
一般的にネガティブ人は精神的健康が低いく不適応的であると言われています。
しかし、防衛的悲観者の精神的健康は中程度を保っているとされます。
細越・小玉(2009)では、防衛的悲観主義者の精神的健康度が方略的楽観主義者と抑うつ者の中間に位置するという結果が示されており、特に精神的健康度が高いわけでも低いわけでもないようなのです。
![サイ子さん](https://psycho-labo.com/wp-content/uploads/2022/09/11835_color-300x262.png)
その理由は、防衛的悲観主義者が自身が自らの思考のスタイルを受け入れているかどうかに左右されるからです。
私はいつもネガティブに考えてしまって…
そんな自分が嫌いだし、直さなければいけないと思う…
![サイ子さん](https://psycho-labo.com/wp-content/uploads/2022/09/11835_color-300x262.png)
失敗が思い浮かぶことは私の個性だし、事前にリスクを考えられる用心深さを長所として生かそう!
![サイ子さん](https://psycho-labo.com/wp-content/uploads/2022/09/11822_color-300x267.png)
上述の研究では、自分の思考スタイルの受容度が高い防衛的悲観主義者は精神的健康度が高く、逆に自分の思考の癖を受け入れていない防衛的悲観主義者は精神的健康度が低くなってしまっていたのです。
![Nameck(なめっく)](https://psycho-labo.com/wp-content/uploads/2022/09/アイコン.png)
![サイ子さん](https://psycho-labo.com/wp-content/uploads/2022/09/11822_color-300x267.png)
まとめ:ネガティブのメリットを考え、自己否定をしないこと
今回はネガティブな考えの持つことのメリットを解説しました。
記事のポイントをまとめます。
- 成功するネガティブな人は防衛的悲観主義者と呼ばれる人たち
- 防衛的悲観主義者は用心深く、しっかりとした事前準備を行うために成功する
- 適応を保つためには、自身のネガティブさを否定しないことが大切
【参考文献】
- 外山美樹(2014)『なぜ防衛的悲観主義者は高いパフォーマンスを示すのか : 熟考がパフォーマンスに影響を及ぼすメカニズムの検討』筑波大学心理学研究 筑波大学心理学研究編集委員会 編 (48) 9-17
- 清水陽香・中島健一郎・森永康子(2016)『対人的文脈における防衛的悲観主義の役割』パーソナリティ研究 24 (3), 202-214
- 細越寛樹・小玉正博(2009)『悲観的思考の受容が対処的悲観者の心身の健康に及ぼす影響』心理学研究 79 (6), 542-548
- 清水陽香・中島健一郎(2018)『防衛的悲観主義者は本当に自尊心が低いのか?――潜在的自尊心に着目した検討』パーソナリティ研究 27 (1), 21-30